約 774,019 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2451.html
4月のある日曜日、俺は自宅近くの公園でバスケをしている。何故唐突にバスケなんぞをやっているのかと言うと、実は中学2、3年の頃バスケをやっていたからだ。言っておくが、部活でやっていたのではなく、当時俺の学年でとあるバスケ漫画が爆発的に流行り、 それまでバスケをやったことのないやつらも休み時間にバスケをするようになったので、ご多分に漏れず俺もバスケをやり始めたのだ。バスケ部の連中にドリブルやシュートのテクニックを教えてもらい、受験の為に塾に入らされるまでずっとやっていた。 そして今日。暖かな春の陽気に誘われて、物置からすっかり埃をかぶったボールを引っぱり出して、20分ほど前からシュートを打ち続けている。2年近く運動から離れていたにも関らず、意外にも体はスムーズに動いてくれる。いや、この1年間は酷使してきたのか?あいつに出会ってから。 なんて考えたのがいけなかったのか、 「あら、キョン。珍しいわね。バスケ?」 向こうからハルヒがやってきてしまった。 「おまえが今日、SOS団を休みにしたことよりは珍しくねぇよ」 「今日はちょっと用事があるのよ」 ここの近くでか?と尋ねると、ハルヒは顔を右に逸らし、 「そ、そうよ。あんたの家の近くに用事があっちゃ悪い?」 と妙に早口で言った。しかし、俺の家の近くで宇宙研究員によるアールグレイ身体解剖展覧会でもやっているのだろうか。 「あんた、あたしを何だと思ってるわけ?」 ハルヒは渋面をつくり、俺を睨んでいた。光線でも出るんじゃないのか? 「そんなことより、キョン。あたしと勝負よ!」 何の勝負だよ。 「それに決まってるじゃない」 そう言って、俺が小脇に抱えたバスケットボールを指し、 「もちろん、負けた方がジュース奢りよ!」 笑顔で罰ゲームを決めた。別にかまわんが、何点先取だ?俺がそう問うと、ハルヒはフフンと鼻を鳴らし、 「相手が参りましたと言うまでっ!」 団長様のご好意により、俺の先攻になった。ハルヒは余裕そうな表情で、 「あ、もちろんあんたはポストアップ無しよ」 わかってるさ。だがな・・・ 「ハルヒ」 「なによ?」 「俺は結構うまいぞ」 試合開始。 もう何本目かわからない俺のシュートがネットを揺らす。 「もーっ!セコい!ペテン師!卑怯者!」 そうハルヒが喚いているが、それに当たるプレーはなにひとつやっちゃいない。運動神経抜群のハルヒが相手なので、多少本気は出したが。 「もう疲れた!キョン、何か飲み物買ってきてちょうだい。甘ったるくないヤツね」 罰ゲームはどこいった。それに俺だって疲れたし、喉も渇いた。 とは言わず、へいへいと平返事をして自販機で適当なスポーツドリンクを2本買ってきた。 お互いにべンチに座ってそれを飲んでいると、 「あんた、バスケできるのね。意外だわ。天動説が実は地動説だったことよりも意外よ」 後半の感想はわかりかねるが、前半だけなら納得だね。 「いい汗かいたし、そろそろ帰るわね」 そう言って立ち上がるハルヒ。 そういえばハルヒ、なんか用事があったんじゃないのか?ハルヒはギクリという擬音が見事にハマりそうなリアクションをして、 「あ、えーっと・・・うん、そう。そうなのよ!この用事、本当は来週の予定だったのよ!」 おいおい、しっかりしろよ。その歳でボケて年金生活をどう乗り切るつもりだ。しかも明後日の方を向いて、妙に挙動不振だし。 「何でもないのよ!じゃあ、また明日ってことで!」 最後まで挙動不振だったな、なんてハルヒの行く末を心配しつつ空きカンをゴミ箱に投げ入れた。 結局ハルヒの用事が何だったのかは、次の週になってもわからなかった。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/642.html
涼宮ハルヒの出会い プロローグ 涼宮ハルヒの出会い 第1章
https://w.atwiki.jp/internetjpn/pages/31.html
場末
https://w.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/57.html
涼宮ハルヒの憤慨 基礎データ 著:谷川流 口絵・イラスト・表紙:いとうのいぢ 口絵、本文デザイン:中デザイン事務所 初版発行年月日:平成18年(2006年)5月1日 本編292ページ 表紙絵:長門有希 タイトル色:緑色 初出編集長一直線!(ザ・スニーカー2005年6・8・10・12月号)、ワンダリング・シャドウ(ザ・スニーカー2006年2・4月号) 初出順:編集長一直線!(第18・19・20・22話)、ワンダリング・シャドウ(第23・24話) 裏表紙のあらすじ紹介 涼宮ハルヒが暇を持て余してたらそれこそ天地が逆になる騒ぎだろうが、むやみに目を輝かせてるのも困った状況ではある。それというのも生徒会長となるお方が、生徒会はSOS団の存在自体を認めないなどと言い出しやがったからで、意外な強敵の出現にやおら腕章を付替えたハルヒ“編集長”の号令一下、俺たちSOS団の面々はなぜか文集の原稿執筆などという苦行の真っ最中なわけだ。天上天下唯我独占「涼宮ハルヒ」シリーズ第8弾! 目次 編集長一直線!・・・Page5 ワンダリング・シャドウ・・・Page163 あとがき・・・Page297 アニメ 全編未アニメ化 漫画 ツガノガク版(雑誌の発表号などの詳しい情報はツガノ版漫画時系列で) コミックス第12巻に収録第56話『編集長★一直線!Ⅰ』(原作P5~P41、最初からハルヒが生徒会室に押し入るまで) 第57話『編集長★一直線!Ⅱ』(原作P42~P67、P72、生徒会質に押し入った後からキョンと古泉が部室に帰るまで) コミックス第13巻に収録第58話『編集長★一直線!Ⅲ』(原作P72~P101,109、ハルヒが宣言するところから、キョンが小説を書き始めるまで) 第59話『編集長★一直線!Ⅳ』(原作P101~P139、谷口が愚痴る&国木田が弱音を吐くところから、古泉が別のシナリオについて示唆するまで) 第60話『編集長★一直線Ⅴ』(原作P139~P162、キョンが続きを書き始めるところから終わりまで) 第61話『毒々ハウスへようこそ』(漫画オリジナル話だが谷口の原稿が完成していないことを口実にキョンの家で編集をしていたところにミヨキチが登場する) コミックス第16巻に収録第73話『ワンダリング・シャドウI』(原作P163-P227、最初から、古泉が作成した地図のポイントへ向かう直前まで) 第74話『ワンダリング・シャドウII』(原作P228-P266、古泉が作成した地図のポイントへ向かうところから、長門が珪素情報生命体について述べた後まで) 第75話『ワンダリング・シャドウII』(原作P266-P286、珪素情報生命体が消去できないと長門が言う場面から、最後まで) 登場キャラクター(原作のみ登場) キョン 涼宮ハルヒ 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 鶴屋さん 谷口 国木田 キョンの妹 生徒会長 喜緑江美里 阪中 阪中の母 樋口さん スポーツマンぽい男 あらすじ 後に繋がる伏線・謎 珪素生命体 STC理論に関わる基礎 刊行順 ←第7巻『涼宮ハルヒの陰謀』↑第8巻『涼宮ハルヒの憤慨』↑第9巻『涼宮ハルヒの分裂』→
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/511.html
キーンコーンカーンコーン ふぅ──やっと授業が終わった。 朝から何も喋って無い私をよそに、教師というのはベラベラと喋る。 あたしはそんな教師を退屈な相手の対象だとしか見ていなかった。 ───この時までは。 私は起立、礼。が終わったその直後にキョンの席のイスを引っ張った。 普段のキョンならあたしの机に頭をぶつけるぐらいの仕草はするはずだった。 …するはずだった、はずだった…。 なんで?どうしてそうも、いつもと…違うの? 私がイスを引っ張った直後、キョンは席から立ち、どこかへ行ってしまった。 他の生徒を見る限り、ぐるりと輪になるようにグループを作っており ──まるで私だけが孤立してるかのように見えた。いや、客観的に見ればそう…なのだ。 古泉「おやおや、ここはキョン君いじめスレですか。私の肉棒が唸りますね。」 そして孤立した今、あの時の退屈は私に話しかけてきた。 『もう、転校しちゃったら?』『何のために居るの?』『友達・・・・ダレ?」 いや…なんで?あのうっさいバカがいないだけでなんで…? 私は黒板を見つめなおすと、まだ書き写して無い部分をノートにとった。 ──いや、孤独なのが怖くて取る「フリ」をしていた。 それを察したかの様に、男子グループの内の一人が黒板を消しに行く。 ──ああ、いいわよ。もう、そことってあるしね…… 無意味に自分の両手を見つめると、涙が少しずつ沸いてきた。 『あたし…なにやってんの?別に悲しくない。こんなの中学の時と同じ。』 なのにこんなに悲しいのは──キョンという話し相手が──遠ざかってしまったから? …ああ、もうバカ!一生懸命書いたノートが涙でくしゃくしゃ! ホントに取り直さなきゃ…ダメじゃない…黒板……消えてるのに… 古泉「ハハッ、よくあることです。」 ──宮さんですよね?涼宮さん。 上から聞こえる声に私はハッと顔を上げる。 そこには女子グループの内の1人 いかにもやんちゃそうな女子生徒が私の名前を呼んでいた。 ハルヒ「な、なによ?」 このクラスには男子グループがあれば女子グループもある。 ──その女子グループのうちの1人が話しかけてくるなんて。 …相当面白いネタでも持ってきたのかしら? 私は自分の顔から少量ながらにも涙が溢れている事も気にせず その女子生徒を眺め返した。 女子生徒「これ、ハンカチ…」 ──えっ? …そうだ、あたしだって普通の女子生徒だ。 急にあたしの中の何かがサッパリと冷めたように抜けていく。 そういえば、言ってたな。キョン。 「お前は自己中すぎる。」 「付き合いきれん。」 「またそれかぁ・・・」 だけど… 『普通にしてれば可愛い』って── 古泉「なんか臭いぞ」 私はキョンの言葉を頭に描き返すと ふとハンカチを差し出している女子生徒の方を見ると。ようやく自分でも悟った。 ──私だって普通の女子高生…じゃない。 身を持って本当の退屈を知ったからだろうか、目の前にあるソレはとても輝いて見えた。 私の一番望んでいないもの、平凡。それが、今ばかりは輝いて見えた。 私は涙顔を見られた恥ずかしさもあってか、少し強気な顔になる。 ──話かけるなら、もっと早くにきなさいよ! 恐らく心はそう叫んでいた。 そして不本意ながらも、その平凡というなの橋に足をかけようとする。 ハルヒ「あ、ありがと。いやー最近涙腺ゆるんじゃってねぇ。 もしかして風邪かな?いや、これは花粉症かぁー!」 クラス全員が、一帯となったかのように静まり返る。 そして、ハンカチを差し出した女子生徒の声だけが冷たくこだまする。 ───ないね。やっぱり。 古泉「ハハッ、あとがこわそーだっと。」 静まりかえったと同時、いや、その後を追うように ハンカチを持ってきた女子生徒が声を漏らす。 ───ツマンナイ。 その声がクラスに響き渡ると、一つの女子グループから苦笑が聞こえた。 …ああ、そういうことか。一人を囮にして私を観察しにきたんだ…。 ……いい魅せ物でしょ?でも、アンタもタダの人間なのよ。 あたしを楽しませる事の出来ないニンゲン。 だから?あたしがアナタを楽しませてみろと? …ふざけんじゃないわよ! 急にあたしの中にあった怒りが爆発する。 それは反射的に行動にも現れ、ハンカチを差し出した女子生徒の手をパン!となぎ払う。 クラスには険悪なムードが立ち込める。 あたし…退屈……ははっ、あの教師と同じ……退屈。 『──転校って意外と悪くないんだぞ。ハルヒ。』 ……キョンの声だった。 古泉「続きを読むにはふんもっふ!ふんもっふ!」 キョンがクラスへ帰ってくると、先ほどの雰囲気が嘘のように、皆明るくなっていた。 谷口「よう、キョン!どこ行ってたんだよ!」 国木田「やっぱりキョンがいないとダメだねぇ。」 なに…この…偽善者共……! あたしの精神はもう限界だった。 なんで…キョン……コイツだけ…! あたしはキョンに嫉妬していた。 団長のあたしがダメでなんでコイツだけ…! しかしそんな事も、よくよく考えてみれば納得せざるをえなかった。 ───そっか、キョンは違うんだよね。あたしと。 この瞬間、どこかに壁ができたような気がする。 SOS団という薄い仕切り、そんなもの見掛け倒しにすぎなかった。 一方私に設けられたのはクラスという大きな壁。全員が団結して造った壁。 ──面白いじゃないのよ!逆にやりがいがでる! …こんな壁……あたし一人で… 気づけないわけが無い、あたし一人、強がってるんだ。 この空間で、一人だけで… 古泉「ハハッ、これが本当の閉鎖空間ですか?」 教師「えー本日を持ちまして、涼宮ハルヒさんは転校することになりました。」 …どいつもこいつもニヤケ面。 教師がいなかったら拳の1発や2発かましてるところよ。 ──そんな学校生活も、もう終わり。 唯一出来た思い出が楽しくなかったのが心残りかな? 教師の岡部がサラリと奇麗事を並べると、生徒の間からは拍手の音が聞こえた。 どうせ、万歳の拍手だろう。あたしを惜しむ者なんて一人もいない。 あたしの前の席にいるキョンが遠く見える。 …キョンは、どういう意味で拍手してるんだろう…? だけどもう、どっちでもいい、アンタともサヨナラよ。 ……少しだけ楽しかった。ありがとうね。 あたしはもう次の生活を思い描いていた。次こそ普通に生きれますように…。 そんな精神状態の中、ある音があたしの耳を刺激する。 ガラッ! キョン「どうしたんだハルヒ、お前らしくないぞ。」 ──えっ? ……キョン? 古泉「見て下さい、この体。機関のお偉い方さんからも好評なんですよ。」 ──嘘。キョンはあたしの席の前で拍手を送っている。 ただ、転校しようとしているあたしを、無関心な表情で…。 長門「…精神を攻撃する情報思念体。解ってしまえば、怖くない。」 突然現れた長門が教師である岡部に飛び掛る。 ──そんな光景に驚いている暇もなく、キョンがあたしの手を引っ張る。 キョン「いくぞ、こっちだ!」 その時のキョンの手は暖かかった。間違いない。本物だ。 あたしはふと顔に笑みを戻すと、そのまま倒れてしまった。 キョン「───おーい、ハルヒぃー。」 ん……ん? 気づけばあたしはキョンに抱きかかえられていた。 ──夢?だったの? キョン「お前相当悪い夢見てたんだな、ソファーから落ちるなんて普通はありえんぞ。」 普通の部室。普通の光景。普通の…キョン……。 ハルヒ「あ……あっ、そう! あたしたまにはだってこーいう事あるわよ!」 ──嬉しかった。夢でよかった。 そう思うと同時に、また眠気が誘ってくる。 ハルヒ「あたし、もっかい…寝る。 キョンも……。」 あたしは喉まで出かけた言葉を噛み殺した。 だけど、あの、手を引っ張ってくれた時のキョンは本当に頼もしかった。 ──そのうち、副団長も考えてやらなくはないわ。団長があたしでよかったわね、キョン。 古泉「さてさて…涼宮さんはまた眠ってしまいましたが…。」 長門「いい。……彼女に何らかの支障を出さない事、これが私達の役目。」 キョン「しっかしまぁ、やっぱり頼りになるよな、長門は。」 長門「………」 ───ハルヒ、お前は戦った。自分の精神に負けず、がんばった。 だから今は眠っていろ、SOS団の団長が倒れるなんて団員の俺達には、願ってもいない事だからな…。 ……お前が閉鎖空間にいる間、いろんな計画立ててたんだぞ。 お前が起きたら、どれから実行してやろう……っとと、それを決めるのは団長のお前だったな。はははは……。 Fin これを読んでくれた古泉萌えの皆さんありがとう 古泉「次週もマッガーレ!」 2話
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/832.html
まだまだ寒さが残っているがもう菜の花が芽吹く季節になった。 1年程前に結成されたSOS団は右往左往ありながらも無事に続いている。 最近思うのだが何かがおかしい気がする。何がおかしいのか、と聞かれると 俺も困るのだが変なもんは変としか言いようがない。 宇宙人や未来人、超能力者が普通に出入りしているだけで十分変なのだが まぁ、それは置いておこう。そんなこといいだしたらキリがないしな。 こんなことを考えてたのも一瞬でもはや生活習慣の一部になりつつある SOS団のアジト、文芸部室へと足をはこんでいた。 ノックをすると可愛らしい声で返事が返ってきた「あっ、はぁい」 今日も似合い過ぎのメイド服を着た朝比奈さんはにこやかに微笑んで 音を立てているヤカンへと駆け寄っていった。 俺は部室を見まわした。 いつものさわやかな微笑みをうかべた古泉とこれまたいつもの無表情で ハードカバーを読みふけっている長門がいた。 「どうも。涼宮さんは一緒じゃないんですか?」 古泉はチェス盤とコマを用意しながら言った。1回も勝ったことないのに こいつもよくあきないな。 あいつは掃除当番だと言い俺は既に指定席になりつつあるパイプイスに 腰をおろした。 そんないつもの日常に俺は安心しきっていた。 まさかこんなことになるなんてな・・・。 俺は朝比奈さんの煎れてくれたお茶に今世紀最大の幸せを感じつつ 進級テストについて考えていると「どうしましたか?」 古泉が声をかけてきた。 「ちょっと将来のことを考えて暗澹たる気分にひたってたんだよ」 「いやぁ、あなたがそんな顔をしているのが珍しくて恋でもしてる んじゃないかと思いましてね」 それはない。絶対にない。 古泉のクスクス笑いを無視しつつあいつ遅いなぁなんて考えていた。 あいつと言うのはわれらが団長、涼宮ハルヒのことだ。 「涼宮さん遅いですねぇ・・・。」 俺と同じことを考えていたのは俺の天使朝比奈さんだ。 どっからみても中学生か小学生の高学年にしか見えないのだが 実は俺より年上らしい。 まぁ、実年齢は禁則事項♪らしいので本当のところは 知らないが・・・。朝比奈さんが何歳かなんて問題は置いておこう。 最近感じていた違和感も忘れ退屈な日常を過ごしていた。 ただ、今日は何かがおかしかった。 何故なのだろう。ハルヒが部室にこなかった。 次の日俺が心臓破りの坂(命名俺)をのぼっていると後からやかましい 男が歌いながら近寄ってきた。 「WAWAWA忘れ物~っとキョン今日もしけた顔してんなぁ」 お前ほどじゃないよと言いつつ俺は冷たい手に息を吹きかけた。 「それより谷口チャックが開いてるがそれはファッションか?」 「なっ、ありがとな。このままだと変態扱いされるとこだったぜ」 元から変態だろ。 「お前程じゃないぜなんせキョンなんてあだ名で呼ばれるなんて 俺は死んでも無理だ」 うるさい。俺も好きで呼ばれてるわけじゃないんだぞ。 なんて無駄なやりとりをしている間に学校についた。 教室にはいると俺の後ろの席には誰もいなかった。 いつもは俺より早く来ているんだがな・・・。 まぁ心配するだけ無駄だな。前にも遅かったことあったしな。 だが、ハルヒはこなかった。担任の岡部に聞いても連絡はきてない としか言わない。 ハルヒのことが気がかりで授業なんて聞いていられない。 理科の教師が谷口にチョークを投げつけて「おい!谷口!チャック を開けるな!」と言ってたのも聞き流す。 そして4時限目の終了を告げるチャイムが鳴るやいなや俺は部室棟へ 向かった。もしかしたらハルヒはここに泊まってるんじゃないだろうな なぁんてありえもしない事を考えながら、文芸室の扉をノックした。 「だっだれ!?」・・・ハルヒの声だ 「俺だ。それより教室にもこないでここで何してる」 ガチャガチャ・・・鍵閉めてやがる。 「キョン?何かよう?用がないなら帰ってよね」 「いや用があるわけじゃないんだがちょっと心配になってな」 「えっ・・・」 そこでハルヒは鍵を開けて顔を出してきた。 目が赤く少し腫れている。何かあったのか? とたずねると。 「ちょっと親父と喧嘩しちゃってさぁ・・・それで家出してきたの!」 やれやれ。それはいつだ? 「昨日の夜よ?」「ってことは何か?お前は昨日の夜からここにいたのか?」 「そうよ」そこで俺は言葉を失ったね。 ハルヒは笑っている顔を作っているのだが下手っぴすぎる。 笑顔の目の端の方、涙が滲んでいる。 残念ながら俺はそんな顔をしている女性にかける言葉は知らないから お前にかけてやる言葉はないぞ?古泉あたりならかまってくれるかも しれんが。 そのまま沈黙を保っているとハルヒが 「しばらく授業にはでないわ。あと、SOS団は休m」 「ちょっとまった。」 俺はハルヒの言葉を聞き終える前に言った。 「理由はわからんが、とりあえず親父さんも反省してるはずだし 心配もしてるはずだ。だから帰ってやれよ」 「なっ・・・」 何故だかハルヒは悲しそうな表情を作って 「・・・やだ」 泣きながら拗ねている子供のように言った。 やだって・・・。 「キョンの家いってもいい?」 俺が何を言おうか迷っているとハルヒが何を血迷ったか 俺の家に行きたいなんて言っていた。 「あぁ、家に帰るのは夜でもいいが親御さんにあんまり心配 かけんなよ」 「遊びにじゃなくて・・・しばらく泊めなさいよ」 今にも泣き出しそうにしてるハルヒに俺はダメだ・・・とは言えなかった。 それから俺は、他のSOS団メンバーに今日は部室にこなくてもいいと 伝えて俺は魔の坂(命名俺)をハルヒと2人で下っていった。 その間に会話はなかった。沈黙。 そのまま沈黙を保ちつつ家に帰ると妹が 「ハルにゃん!どうしたのぉ?キョン君ハルにゃん泣かしたの? うわぁ~。わ~るいんだわ~るいんだ」 そんな幼稚なことを言っていたがとりあえず無視しておいた。 そして事情をおふくろに説明すると 「ハルヒちゃんなら大歓迎よ。いつまででも泊まっていきなさい。」 「はい!ありがとうございます」おいおい・・・。本当に 何年間も泊まったらどうするんだ?まぁ、困るのは俺だけのようだが。 俺は妹+おふくろの行末を案じつつハルヒと一緒に俺の部屋に向かった。 その間ハルヒは小さく「ごめんね・・・」と呟いたのだが 聞こえない振りをしておく。人間できてるなぁ俺って。 部屋につくなりハルヒの元気は再活動をはじめやがった。 「ねぇキョン!今日の晩御飯は?あと、お風呂にも入りたいんだけど!」 やれやれ、と何度も封印しようと思った語を口にする。 こんな状況でもハルヒは元気な方がいいな。うん。 「風呂は沸いてるから好きにつかえ。晩飯は寿司の出前とるそうだ」 「わかったわ!じゃぁご飯食べてすぐお風呂つかわせてもらうね」 好きにしろ。 俺は3人分くらいの寿司を皿にのせて自室へと運んだ。 さすがのハルヒでも他人の家族の中にはいっていくのは抵抗があるかも 知れないと俺は考えたからだ。 部屋に入ると「遅い!」何て我がままなお客さんだ。 ほらよ。皿を渡して居間に戻ろうとすると 「ぇ?一緒に食べないの・・・」 「戻ろうと思ったが腹が減って動けねぇ。こっちで食べてくかな」 我ながらこれはひどい。 ハルヒは安堵したように吐息をもらした。 「いただきま~す!」 「いただきますっと」 ハルヒは大きく口を開けて寿司を放り込んだ。 うぉ。何故かハルヒが泣きながらバタバタと暴れだした。どうしたんだこいつ? 「キョンお茶!はやくっ!」 どうやら山葵が鼻にきただけらしい。 「バカキョン!遅いわよ!」 持ってきた緑茶を1瞬で飲み干してあろうことか俺の分まで飲みやがった。 それから30分もしないで寿司は空になりハルヒは風呂へ。俺は妹の宿題をやらされていた。 こんなの小学校でならったっけ?俺は習ってないぞ? と独り言をもらしつつ最終ページにある答えを解答欄に書き写した。 そんな作業を5教科分終わらせた頃に妹が俺を呼びに来た。 「ハルにゃんお風呂にいるんだけどぉキョン君呼んできてぇって言ってるの。 あっ、宿題終わったんだぁ。ありがとね」テヘっと舌を出してシャミセンをどこかに つれていった。さらばシャミセン。 しかし風呂で用があるって・・・なんだ?背中あらえとか頭洗えとかだったら 速攻で拒否してやる。理由?俺だって健全な高校生だからだ。 風呂場についた。うちの風呂は曇りガラスのドアなので中は見えることはないが それでも少し変な妄想をしてしまう。あぁくそ。あいてはハルヒだぞ? そんなことを考えつつ俺はドアをノック。 「・・・キョン?」少しこもって聞こえるのは風呂場に声が反射しているのだろう。 「ああ、んで何だ?用ってのは?」 「・・・がないの」ん?なんだって? 「着替えがないの!急に家を飛び出してきたんだもん・・・」 「俺か妹の服でよければ貸すが・・・妹のは無理そうだな」 「まぁ、仕方ないわ。あんたので我慢する」 俺はとりあえず自室に戻りTシャツとハーフパンツを手に取ったが そこで気がついた。下着がないな・・・。残念ながら俺はそういう趣味は ないから女物の下着なんて持ってないんだ。ほっ、本当だぞ? そんな事を考えながらもう一度風呂場へ。 「なぁ。Tシャツとハーフパンツは持ってきたんだが下着はどうするんだ?」 「あっ、考えてなかった・・・。」 やっぱりな。 その後の会話は思い出したくない。 俺が必死にチャリを漕いでいる理由と相違ない。 「キョン・・・下着だけでいいから買ってきなさいよ!」 「何で俺が?」 「だって裸で外出たらつかまっちゃうでしょ」 それはそうだが・・・。それでも俺が女性物の下着を買いに行くのは忍びない。 妹にいかせろと言ったらハルヒは 「妹ちゃんはキャラ物とか買ってきそうで危険そうだもん」 それにコンビニでいいからさとハルヒは付け足し制服のポケットから1000円札を 俺に渡した。「風邪ひいちゃうから速攻で買ってきてね。3秒以内で!」 おいおい3秒って・・・。それでも風邪なんかひかれたら目覚めが悪いので 俺はチャリを漕ぎ続けている。立ち漕ぎダッシュだ。 コンビニの前で急ドリフト。キレイに停めてコンビニへと入っていく。 織物が置いてあるコーナーの横に女性物の下着が売っていた。 色とか大きさは知らないので一番端にあった白いのを手に取った。 そしてレジへ・・・。今までにないドキドキと緊張感。やれやれ。 これは何プレイだ。店員は「738円です」と平坦な声で言ってくれた。 店員は40代くらいのおばさんだ。若い人だったらきつかったな。 ハルヒに渡された1000円札を店員に渡しておつりを貰うまでの時間が かなり長く感じた。まぁ、実際数秒しかたってないんだがな。 それから走ってチャリに向かい、急いでチャリを漕いだ。 行きよりも早いと思われるスピードで家に着いた。 息は切れ切れだ。だが待ってもいられないのでハルヒの待つ風呂場へ。 バスタオルを巻いたハルヒが立っていた。 「遅いわよキョン!すっごい寒かった!」 やれやれ。俺の超マッハダッシュ(命名俺)でも遅いというなら どんな速度ならお前の速いに該当するんだ? 「・・・って」「ん?」「・・・・てけ」 「ああ?」「服きるからでてけ~!」 ハルヒがそう叫んだときこう・・・バスタオルが ハラリっていうかフワっていうかそんな感じにハルヒの体 から剥がれ落ちた。目の前にはハルヒが生まれたままの姿で・・・。 お互いに違う理由で沈黙した。っていうか俺は気を失っていた。 「・・・ッン?・・・キョン?」 ハルヒの声が聞こえる。だが一度寝た俺はそう簡単には起きないぞ? 「このバカキョンっ!団長様の命令に逆らう気?死刑よ死刑。絞首刑!」 目が半開きの状態で真上を見るとハルヒが涙目で俺を殴り起こしていた姿 が目に入った。 サイズが合わなくてブカブカのTシャツ(俺の)とハーフパンツ(これも俺の) を着ているハルヒ・・・下から見ると色々と丸見えだぞ? 「あぁ・・・。なんか見てはいけない物を見てしまった気が・・・」 そう言うとハルヒが顔を真っ赤にして俺の襟を掴んできた。 「記憶から抹消しなさい!宇宙人と契約して!アブダクショーンって呼ぶのよ」 やれやれ。無茶言うなよな。もしアブダクションで長門や朝倉なんかが来たらどうすんだ 長門はいいが朝倉にはトラウマがある。しかももう立ち直れないくらいのな。 ハルヒはそのあともギャーギャーと騒ぎ立てていたが、心配して妹が来たあたりで 「まぁいいわ。不可抗力だったし」わかってんならこんなことするなよな。 やれやれ。まぁこれで大きな問題は解決だ。 「お風呂入ったから何か眠い・・・」 子供の用に両手で目をこするハルヒはすごくかわい・・・何考えてるんだ俺 相手はハルヒだぞ?(本日2回目) 「ああ。じゃぁ妹の部屋にでも布団ひいてやる。」 「何言ってるのよぉ・・・あんたのベット使わせて貰うわぁ・・・」 もう寝そうだ。まだ9時だぞ?俺の妹でさえまだ寝てない・・・ ってこいつ今何ていった?俺のベットで寝るって・・・俺はどこで寝ればいいんだ? 「下に布団ひけばぁ・・・。それとも一緒にねるぅ?」 眠気に負けて投げやりだ。 「んじゃぁ下に布団ひかせてもらうな」「うぅん・・・」 ハルヒは覚束ない足取りで俺の部屋へと向かった。 俺もその後ろを追って自室へとむかった。 部屋に入るやいなやハルヒは俺の枕へ顔を埋めた。使ってもいいが 涎はつけるなよと言い残し俺はさっさと布団をしいた。 まだ眠くなる時間でもなかったので長門から借りていた 【宇宙の原生物】とかタイトルのハードカーバーを広げた。 ハルヒが電気をつけるなとかうるさいのでスタンドライトを使って文字をたどった。 そうして何時間たったんだろうな。本に熱中してしまうと時間の経過が わからなくなる。1人の少女が上から降ってきた。 ここで言う少女は紛れもなくハルヒの事で上と言うのはベットのことだ。 結構派手に落ちたのだが俺がクッション代わりになったらしい。 どうりで腹が今までにないくらい痛いわけだ。 「おい、ハルヒ。起きろーおーい・・・だめか」 そのまま読書を続ける気にもなれずハルヒを起こそうとした。 声をかけても反応が無いので体をゆすってみた。 すると寝ていて力の入っていない体は俺の真横に・・・。 我ながらこれは失敗だったな。俺の顔面とわずか15cmくらいの所に ハルヒの顔が!?理性のタガが外れそうになったが相手はハルヒ相手はハルヒ と呟いてどうにか自分を押さえ込んだ。 とりあえず現状をどうにかしないとな・・・。 と、考えている時にハルヒの目から涙が溢れていた。 「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」 家族の夢でもみているのだろ。 泣いているハルヒをこのままほおって置くのも何なので体の動くまま 起こさないように弱い力で抱きしめてやった。 明日俺の体が五体不満足になっていても知ったことか。何故かおれはこうしなきゃ いけない気がした。気のせいかも知れないが。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4927.html
注意! この作品には「オリジナルキャラクター」 「キャラ設定が崩壊」 「他作品ネタ」が盛り込まれています。 オリキャラとかダメって方は見なかったことにしてスルーしてください。 そんなの気にならない方はどうぞ キョン視点 いつもの帰り道、SOS団のメンバー全員で歩く姿は普通の高校生だ。 まぁ、神様とか宇宙人とか未来人とか超能力者なんだけどな。 珍しく長門もハルヒや朝比奈さんの会話に入っている。 ずいぶん人間らしくなったなぁ、とか成長する娘を見る父親のように見ていると 「あ!忘れ物した!」 いきなり大声で叫んだハルヒ、コイツが忘れ物するなんて珍しい。 「ちょっと教室に取りに戻るから、みんなは先に帰って」 一言そう言い残してハルヒは走って来た道を戻っていってしまった。 走るハルヒの後姿を見た後、振り返ると朝比奈さんと長門、古泉が俺を見つめていた。な、なんだ? 「追いかけないんですか?」 古泉、毎回言ってるけど顔が近い。いい加減殴るぞ 「キョンくん、早くしないと涼宮さん見失いますよ?」 朝比奈さん、何で俺がハルヒを追いかけなきゃ行けないんですか? 「「はぁぁ…」」 え?何で古泉も朝比奈さんもため息つくんだ?俺なんかしたか? 「鈍感」 待て長門、何故俺がお前に冷たい目で鈍感と言われなきゃならんのだ。 一体何がなんだか訳が分からない。なぜ俺は三人から冷たい視線を浴びさせられてるんだ? ああもう!わかったよ!追いかければ良いんだろ? 「頑張ってください」「頑張ってくださいね!」「頑張れ」 三人から意味不明のエールを頂いた俺は走って学校へと向かった。 まぁ、この後トンでもないことが起きるんだが、その辺は俺じゃなく本人に語ってもらおうか。 ハルヒ視点 帰り道、課題のノートを教室に忘れたあたしはみんなに先に帰ってと伝えて学校に向かった。 今の時間、部活も終わって先生が戸締りをしている頃だろう。 一度ぐらい課題を忘れたって別に困らないがなんとなく気に入らないから取りに戻る。 運のいいことにまだ戸締りはされておらず、教室まで簡単にたどりつけた。 教室のドアを開けると中は夕日で真っ赤に染まり、恋愛ドラマなんかのワンシーンみたいだ。 ドアを開けると好きなあの人が居て…なんてあるわけ無いし、今時そんな古臭い真似をする奴も居ないだろう。 少しでもそんな事を考えた自分に呆れつつ自分の席まで歩き出したその時 カラン 何かに躓いた。躓いた物は机の脚に当たって跳ね返り、あたしの前に現れた。 太い黒い柄に日に照らされ銀色に輝く鋭くて大きな刃の目の前にサバイバルナイフがあった。 「なんでこんな物が教室に?演劇部のかしら」 本物の訳が無いと手にとって見たが重く、明らかに本物のサバイバルナイフだ。 「あら、まさか貴女が拾ってくれるとは思わなかったわ」 突然、どこからか声がした。聞いた事のある声…でもどこから? 「うふふふ、誰でもよかったけど貴女が拾ってくれるなんて運が良いわ」 何処からとも無く聞こえる声にあたしは身構えた。 誰!何処に居るの! 「どこって…貴女の手の中よ?それにクラスメイトのこと忘れるなんて酷いわ」 恐る恐る手に持つサバイバルナイフを見ると、北高の制服を着た女の姿が見えた。 良く見るとそれは、去年に突然カナダに引っ越した朝倉涼子だった。 「貴女の体、貰うわよ!」 突然、目の前が真っ白になった。体を貰う?冗談じゃない!誰がアンタなんかに! そう思った瞬間、真っ白だったのが晴れてさっきの教室に戻った。 「はぁはぁ…一体…何だったの?」 床にひざと手を突いて倒れたあたしは一体何が起きたのか分からなかった。 『ああもう…抵抗するから中途半端に融合しちゃったじゃ無い!』 朝倉の声がしてあたしは立ち上がって周りを見渡す。 しかし、朝倉の姿どころか先程のサバイバルナイフも見当たらない。一体何処から? 『貴女の中よ、涼宮さん』 また朝倉の声がした。確かに、頭の中に直接聞こえている気がしないでもない。 ガラ あたしが混乱していると教室のドアが開き、キョンが現れた。 「キョン!」 突然の異常現象に混乱していたあたしはキョンの姿を見るなり、駆け寄って抱きついた。 しかし、キョンはあたしの顔を見てかなり困惑した表情をしている。 一体どうしたのだろうか?あたしがキョンに尋ねようとした瞬間、トンでもないことを言われた 「あの…どちら様ですか?」 何言ってるのかしらコイツ?というかなんでここにキョンが居るのよ? あたしはキョンを睨みつけながら言ってやった。 「キョン、今なら謝るだけで済むわよ?」 しかし、あたしの言葉にキョンは本気で困惑した表情を見せる。一体何なの? 「あたしよキョン!あたし!涼宮ハルヒよ!アンタあたしのこと忘れたわけ?」 あたしはイライラしてキョンに怒鳴ってしまった。 「ハルヒ…?でも身体つきも髪型も違う…いや、顔はハルヒそっくりだが…」 キョンがあたしをじろじろと見て困った表情で言う。 はぁ?なにいってんのかしらコイツは…大体、そんな数分で身体つきや髪型が変わるわけ無いじゃない。 そんな事を思いつつ脚や腕を見てみると、太い…というよりムチムチした感じになってる。特に太もも。 しかも心なしか胸も大きくなってる気がする。髪の毛に関しては背中に掛かるくらい伸びている。 一体全体、何がなんだかさっぱり分からない。 あたしはカバンから鏡を出して自分の顔を確認してみた。うん、いつものあたしだ。 でも髪の毛が長くなってるし、明らかに体格が変わってる。 まるで朝倉とあたしを足して2で割ったような… 『中途半端に融合したからそれで合ってるわね。半分貴女で半分私よ』 また頭の中から朝倉の声がする。どうやら本当に朝倉と融合してしまったらしい。 とりあえず、目の前に居るバカキョンにあたしが涼宮ハルヒだって事を認めてもらわないといけない。 「キョン、まったくの別人みたいに見えるけどあたしは涼宮ハルヒよ?」 「お、おう…信じるよ」 自信の無い返事ほど信用できないものは無いけど、とりあえずさっきあったことを話そう。 正直、信じてもらえないでしょうけど… あたしは適当に椅子に腰掛けて、手短にキョンにこうなった経緯を話した。 教室にサバイバルナイフが落ちてたこと、それを拾った事。 その中に朝倉が居て、身体を貰うとか言われた瞬間に目の前が真っ白になったこと。 気がついたら床に倒れてて、混乱してるところにキョンが来て今に至ること… 「ざっとこんな感じね…信じてもらえそうに無いけど…」 「まぁ、完全に信じろって言われても無理あるなぁ」 「でも!あたしは…涼宮ハルヒよ?」 「それは信じるよ」 キョンはいつものゆるい表情でそう言ってくれた。それだけでも今のあたしにはありがたい。 夕日に照らされたキョンの顔に不覚にもカッコいいと思ってしまった自分が恥かしい。 これからどうしようとか色々考えているとまた声がした。 『良い雰囲気のところ悪いけど、大事な話があるわ』 朝倉の声だ。一体、誰のせいでこんな目に… そんなこと思いつつ顔を上げると、キョンの顔が青くなっていた。まるで恐いものでも見た子供のように。 「な、なんだ!何処に居る!」 急に立ち上がって回りを見渡すキョン。一体何なの? 『ここよ、ここ!あなたの後ろ』 「な!後ろか!…っていねぇじゃねぇか」 『下よ、下!』 キョンとあたしが床に視線をやると、そこにはちっちゃい朝倉がいた。 いつの間にあたしの中から出てきたんだろう?というか、元に戻して欲しいんだけど? そんな事を考えていると朝倉が『悪いけど机に運んでくれない?』と言って来たので机の上に運んだ。 『すごいでしょこれ。そのまま小さくなった私でしょ?』 「そんな事どうでもいいのよ。せめてあたしを元に戻してから出て行きなさいよ」 笑う朝倉を睨みつけながらあたしは言った。 『私の意識体をこの人形の中に入れただけだから、貴女と私の肉体は融合したままなの』 『貴女だって、頭の中に私が住みついたままでいいの?考えてる事が全部、私に筒抜けよ?』 それは困るわね…自分の考えが他人に筒抜けになっているほど恥かしいものは無い ところでその人形は何処から持ってきたのよ?まさか自分で作ったんじゃ… 『この身体?これね、山根くんが密かに私の身長とかスリーサイズとか調べてたみたいで、 私をそのまま1/6したサイズで作ったみたいなの。なんと、下着の色とかまで一緒なのよ』 気持の悪い奴だとは思っていたけど…真性だったのね 『もうストーカーよあれは』 「なぁ…そろそろ、大事な話とやらをしてくれんか?」 今すぐにでも帰りたそうな顔をしたキョンが会話を遮る様に言った。 そうだ、朝倉が大事な話があるとか言ってたわね。 『ああ、そうね。あのね、涼宮さんを元に戻す方法は…』 元に戻す方法は? 『今のところ無いの。ごめんね』 「「えええええええええええええええええ!!!」」 あたしとキョンは同時に驚愕の声を上げてしまった。 「元に戻す方法は無いって…いくらなんでも無茶苦茶だろ」 キョンが朝倉に向かって言う。しかし朝倉は可愛く困った顔をして言った。 『だって元から完全に乗っ取るつもりで居たから、元に戻す方法なんて考えて無いの』 なんだろう…目の前の動く人形を思いっきり窓から投げ捨てたい衝動に駆られている。 みくるちゃんに負けないくらいの魅力的な身体を手に入れたとは言え、嬉しくない。 なぜなら、今のあたしは涼宮ハルヒと朝倉涼子を足して2で割ったらこんな感じって状態なのだから。 それに、家に帰っても両親があたしを見ても誰か分からないだろうし、学校のみんなだって… 「安心しろハルヒ。長門に頼めばなんとかしてくれる」 『あ、それ無理。無理に引き剥がすと私も涼宮さんも死んじゃうもの』 つまりずっとこのまま…あははははは 「お、落ち着けハルヒ。だったら俺の家に来ればいい」 え?キョンの家に? 「着替えやらを用意するくらいなら親御さんに顔を合わせずに出来るだろう?」 まぁ、二人とも仕事で居ないし出来ない事も無いけど…良いの? 「むしろ大歓迎だ!」 すごく嬉しそうな笑顔でキョンはあたしに言う。 こんなにあたしに優しいキョンは初めて見るから、戸惑ってしまう 『涼宮さん、空気に流されちゃダメよ!キョンくん、すっごく下心が見えてるわ!』 朝倉が必死にあたしに呼びかけてくる。 確かに、いつものキョンとは何かが違う。なんというか気持悪い。 「おいおい失礼な事言うなよ。困ってる女の子を助けるのは男として当然だろう?」 うん、いつものキョンなら絶対言わないわね。 古泉君と谷口を足して二で割ってキョンの皮を被っているみたいだ。 「ところでハルヒ、髪邪魔じゃないか?」 確かに、いきなり朝倉並に髪の毛伸びちゃったから邪魔ね。 あたしはいつもポケットに入れている髪ゴムを取り出し、髪を結った 髪を切ってちゃんと出来なかったポニーテールも今の髪の長さなら出来るからやってみよう。 「久しぶりだったから手間取ったけど、どう?キョ…ン?」 顔を上げてキョンを見ると、某羅王の最後みたいなポーズで固まっていた。 「生きてて…生きてて良かった…俺はついに理想のポニーテールに…」 なんかブツブツ言ってるキョンから危険な気持悪いオーラが出ている。 ここまで気持悪いと思ったのは初めてだ。 『涼宮さん、今のうちに逃げるわよ!このままじゃ貴女が危険だわ!』 いつの間にか私の肩に乗っていた朝倉があたしに叫んだ。 あたしも今のキョンからは身の危険を感じたので、カバンを持ってダッシュで教室から出た。 教室から雄たけびが聞こえてきたような気がするけど、きっと気のせいだと思う。 「で、これからどうするのよ朝倉?」 正直、行く当てが無いのでどうしようもない。 有希の家に行くにしても、朝倉のことをどう説明したらいい分からないし、みくるちゃんは家知らないし… 古泉君は悪いけど完全に信用は出来ないからダメで、キョンに関しては自殺するようなものだ。 『とりあえず私の住んでた部屋に行きましょう」 カバンに隠れている朝倉が頭を出してあたしに言った。 引越して今は誰も住んでいない部屋に行ってどうするのよ。 『実はいつでも戻ってこられるように荷物とかはそのままなの』 部屋の中が空だったのは情報操作で云々と説明してくれたけど、色々ありすぎて頭に入らない。 朝倉の部屋に向かう途中、男の視線がいつもよりすごかったのがなんか悔しい。 なんか女性からの視線もすごかった気がするけど気のせいだろう。 特に変なツインテールの娘とショートカットの娘を何度も見かけた気がするけど気にしたらダメだ。 ようやく朝倉の部屋に着いたあたしは倒れるように朝倉のベッドに寝転んだ 寝転んだまま部屋の中を見渡すと、有希とは違って何処にでも居るような女の子の部屋であることに気がついた。 しかし、本棚だけは異常で、ナイフやら拷問に関する本においしいおでんの作り方、ストーカーを撃退方法なんて本ばかりだ。 後者は良いとして、前者は女の子が読むような本ではないはず。一体どんな趣味してるんだろう? 『ふぅ…危なかったわね。キョンくん、完全に貴女の事を襲う気で居たわよ?』 床に置いたカバンから出てきた朝倉があたしに言う。 確かに、あれは人を襲う獣の目だった。襲うは襲うでも性的な意味で襲うケダモノの目だけど。 朝倉があの時叫ばなかったらきっとあのケダモノキョンに襲われていただろう。 しかし、朝倉はなんであたしを助けたの?笑って眺めてそうなイメージがあるんだけど? 『涼宮さん、私に対してなかなか失礼なイメージを持っているのね…』 だって普段は優等生の仮面被ってて、裏で鬼畜な事してるドSな女って感じがプンプンするし。 『…まぁいいわ。言っておくけど、その身体の半分は私のなのよ?あんなケダモノに蹂躙されるなんて嫌だわ』 そんな事言う人に限って蹂躙されると… 『悔しい…でも感じちゃう…なんて絶対言わないわよ?』 元に戻ったら意地でも言わせてやるわ。 再びキョン視点 「うおおおおおおおおおおぉ!!」 あっさりと理想のポニテっ娘に逃げられて怒りの咆哮を上げてしまった。 しかし、中身はハルヒだ。行くところなんて限られてくる。 とは言ったものの、長門の家は朝倉が居る以上行かないだろうし、朝比奈さん家は知らないだろう。俺も知らないが。 外見が恐ろしく変化してしまったせいで阪中に頼ることも出来ないだろうし、一体何処に行ったのだろうか? トボトボと街中を歩いていると人とぶつかってしまった。 「オイ、テメェ!何処見て歩いてんだ!」 ぶつかった相手は運が悪い事にヤンキーだった。 しかし、ポニテっ娘に逃げられて傷心気味な俺は目障りなそいつの顎に目掛けて強烈なフックを入れてやった。 足から崩れて倒れるそいつを無視して俺は、明日は学校にハルヒは来るんだろうか?なんて考えていた。 清清しい朝だ 珍しく妹にボディプレスで起こされる事無く目覚めた俺は窓から空を見て思った。 とても気分がいい。学校に行くのがこんなに楽しみなのは人生で初かもしれない。 なぜ俺がこんなに機嫌が良いかと言うと、理想の女性に会えるからだ。 あの朝比奈さんすら凌駕する素晴らしい女性、涼宮ハルヒに。 正確に言えば、涼宮ハルヒと朝倉涼子が一つになった、涼宮涼子…朝倉ハルヒ?まぁ、朝倉は1/6サイズで居るからハルヒで良いや。 朝食を取り、着替えを済ませていつもより早く家を出た俺はニヤニヤしながら学校へと向かった。 いつものように、駅前の駐輪場に自転車を止めて駐輪場を出た俺は数人の男に囲まれた 「よう、昨日はよくもやってくれたな!」 顎に湿布を貼った男が俺の胸倉を掴んで怒鳴って来た。 俺は反射的に顎に湿布あ貼ってある方とは逆側にフックを入れて、怯んだ隙に走って逃げてしまった。 せっかく良い気分だったのに台無しになってしまった。 早くポニーテールのハルヒに会いたい。 色々とイレギュラーな出来事があったが、無事に教室に着くことが出来た。 俺はそりゃあもう、戦場の真ん中でドンパチやってる連中をそこに居るだけで戦意喪失させるくらいの輝かしいオーラを出している。 いつもなら朝一に絡んでくる谷口が絡んでこなかったり、阪中や成崎たちが微妙な表情をしているのも、そのせいだろう。 残念なのが後ろの席の女神がまだ登校して来ていない事だ。 まぁ、俺がいつもより早く登校して来ているから来ていないだけだな。 谷口「お、おい…キョンから異様な気持悪いオーラが出てんぞ国木田」 国木田「すごい笑顔だなぁ、今なら古泉君並にモテそうだよね?」 谷口「いや、女子はドン引きしてるぞ…国木田」 山根「僕の…僕の朝倉さんが…居ない」 少し周りに耳を向けてみたが、いつもどおり平和だ。素晴らしいな平和って そんなこんなで教室でハルヒを待っていると、ギリギリの時間に登校してきた。 昨日の姿は夢ではなく、女性の誰もが求める理想の体型にポニーテールという姿 「おはようハルヒ!」 今までに無い、輝かしい笑顔で俺はハルヒに挨拶する。しかし… 「ふん!」 素っ気無い態度に俺は入学当初のハルヒを思い出して凹んだ。買ったばかりの新車を電柱にぶつけたくらい凹んだ。 それからずっとハルヒは俺に喋りかけるなこっちを向くなと言わんばかりの空気を出し続けていた。 何とか話をしようと授業後なんかに振り向くと瞬間移動でもしたかのように姿を消してしまう。 放課後のSOS団の活動にも姿を現さない。俺はもう死んでしまいそうだった。 ハルヒが…ハルヒが俺を避けるんだよぉ… 結局、ハルヒが黙って帰ってしまい今日一日の心の傷を癒すために文芸部室に来ている。 しかし、天使であるはずの朝比奈さんも今は普通の女の子にしか見えない。 「理由は分かりませんが、涼宮さんの外見が変わってしまった事と何か関係が?」 知らねぇよ…ハルヒ分析はお前の得意分野だろ古泉 相変わらず気持の悪い笑顔を崩さずに話す古泉に俺はぼやく。 「関係は大いにある。朝倉涼子が無差別に身体を乗っ取ろうとした際に偶然にも涼宮ハルヒが選ばれた」 突然話し始めた長門に不意を突かれた俺と古泉は長門の方を向いた。 「朝倉涼子が涼宮ハルヒを乗っ取ろうとした際に涼宮ハルヒの力が反発し、中途半端に融合してしまったために両者の肉体を足して2で割った形となった。 しかし、涼宮ハルヒの力が大きかったために涼宮ハルヒが融合した肉体の主権を得た」 「現在の涼宮ハルヒの肉体は朝倉涼子をベースとし、胸の大きさは朝比奈みくるより若干小さいが全体的な体型が良いため魅力的に感じる。 私は彼女を見ると異様なほどのエラーが出る。涼宮ハルヒ排除の許可を」 長々と私怨入りの説明してくれた長門の表情には負のオーラがにじみ出ており、同時に朝比奈さんからも同様のオーラが出ていた。 「待て長門、なんでエラーが出るのか知らんが間違っても排除はするなよ?」 「完全に了承する事は出来ない。朝比奈みくるなら私の今の気持が分かるはず」 「ええ、長門さん。とってもわかりますよぉ…今の涼宮さんは魅力的ですからねぇ…」 ダメだ。長門も朝比奈さんも殺気の混じった負のオーラを全開で放出している。 古泉が笑ったまま青ざめてガタガタ震えているくらいだ。 凍りついた空気に耐えられなかった俺は荷物を纏めてさっさと帰宅した。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6525.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅱ …… …… …… ああ、なんだ集合時間より一時間は早く着いたぞ。 いつもは二十分近くかかる駅前までだが、空から一直線に来ればこんなに早いんだな。なんせ五分とかからなかった。 と言うかアクリルさんの飛ぶスピードが速いんだろう。 などと諦観している俺がいる。 「ふうん。あの時計で短針が九、長針が十二になるまでにハルヒって子が来るのね」 「ええまあ……」 「とりあえず待ちましょう」 「それはいいんですけど、『さくら』さん……」 「何?」 「俺たち、注目を集めてるんですが……」 そう。うんざりしている俺とあくまであっけらかんとしているアクリルさんの周りには得体の知れないものを見る目をした人だかりができているのである。 「何で?」 「……ここはさくらさんが本来住む世界じゃありませんからね……『魔法』は認知されていないんです……」 「あ、そう言えばそうだったわね。でも安心して。それじゃ――」 ん? 何だ? アクリルさん、左手を開いて翳しているし……って! その手から強烈な光が発せられる! うぉい! ただでさえパニック寸前の雰囲気満々なざわめきが沸き起こっているのに追い打ちかけますか!? 「心配いらないわよ。この魔法はメモリーリウィンド、簡単に言えば記憶を除去する魔法……じゃないか、記憶を巻き戻す魔法、の方が適切かな?」 アクリルさんが説明を終えると同時に光が止む。 刹那、人だかりは、「あれ? 何してたんだっけ?」「わたしは……」と呟きながら、まるで何事もなかったかのように四散していった。 って、これは……? 「んまあ、さすがに人の記憶を操作する、なんて真似はそうそうできるもんじゃないからね。一応、そういう魔法がないわけでもないけどそれは催眠術や傀儡術に近いものがあって『覚める』と何の意味もなさないのよ。だから今のは記憶を前の記憶まで戻す魔法だったの。とりあえず、あたしたちが現れた時間前まで、ね」 な、なるほど……あれ? でも、同じ光を見ていた俺はどうして記憶がなくならなかったんです? 「ふふっ。今の人たちはあたしだけを見たのかしら?」 あ、そうですね。俺も見てますよね。 「そういうこと。記憶巻き戻し対象はあくまで『あたしとキョンくんを見た人』。なら、キョンくんが影響を受けないのは当然でしょ」 相変わらず魔法ってのは凄い力だ。できることとできないことがあるのは仕方ないとしても通常、普通の人が持つ能力からすれば格段にできることが多いんだからな。 はてさて、そんなちょっとした異常事態も文字通り、何事もなかったことにしたアクリルさんと俺は、ただただ待ちぼうけである。 そりゃまあ仕方ないことで集合時間よりも一時間早く着けば当然の成り行きとしか言いようがない。 「ん~~~まだ二十分はあるわね」 背伸びしながらアクリルさんが呟いております。 ううむ……やっぱ背伸びをするとさらにその豊満な丸みを帯びたものが強調されますな…… しかも山吹色のノースリーブシャツの脇からなかなか素晴らしい光景が垣間見えて目のやり場に困りますがな。うぉ? ひょっとしてノーブラってやつか? あ、臍も見えている。なるほど、胸が大きいと下に生地が収まり切らないってことか。 ヘアカラーが黒になっているとまったく違う印象を受けるもんだ。と言うか、あのヘアカラーが異質過ぎるんだろう。 などとアクリルさんは全く気付かないのだが、劣情に浸っていた俺の至福のひとときを吹き飛ばす音響が響いたのはこの時だった。 着信、古泉一樹。 ん? 何だ? どうした? 「もしもし?」 『おはようございます。古泉です』 お前はどこぞのニュースキャスターか? 『いえ、まずは挨拶を、と思ったものですから。それよりもお聞きしたいことがあります』 何だ? 『あなたの隣におられる方はどちら様ですか? 確認したところ、朝比奈さんも長門さんもご存知ない方ですし、佐々木さんでもありませんよね?』 ん? ああ、この人は……って、お前らもう来てるのか? 集合時間までまだ二十分はあるぞ? いつもこんなに早いのか? 『そんなことはどうでもいいです。それよりもあなたの隣の人の方が問題です』 は? 何でだ? 『……涼宮さんももうこちらにいらっしゃってるのですが……』 古泉の声はなんとも触らぬ神に祟りなしっぽい口調だな。 あーてことは…… 俺はこめかみにでっかい困った汗を浮かべて、 ううむ……確かに背後からなんだか無言のプレッシャーに等しいどす黒いオーラを感じているような気がする…… 「えっとだな古泉……ハルヒにこう言ってくれないか……?」 『僕の声が届くと思えないのですが?』 まるっきり暗君の弑逆を決意した冷徹な奸臣のような声だぞ、おい。 『で?』 「分かった分かった。じゃあハルヒに替ってくれ。俺から話す」 『……分かりました』 古泉の返事を聞いて待つことしばし。 『……ふーん……あんたなんかでもナンパが成功するのね……』 第一声が思いっきり嵐の前の静けさなのですが? 五分後に雷付き暴風雨が来るのが解っていながら家に居ればいいのに血迷って雨具を持たずに外出した三分後の心境とはこのことだ。 しかしまあ今回は後ろめたくなる理由はどこにもない。あるはずがない。 って、今回“は”って何だ。俺は一度たりともそんな後ろめたいことをした覚えはない、はずだ。 「あー勘違いするなハルヒ。別にこの人はナンパした人じゃない。それよりも早くこっちに来いよ。この人はお前にも会いたいって言ってるんだ」 『あたしは別に会いたいと思わないわ』 だから違うって。何、勘違いしてやがる。 って、待て待てツッコミを入れるのは後にしておかないと、向こうがぶつ切りするかもしれないんだ。その前に用件を伝えないと。 つーわけで俺は捲し立てるように言った。 「違うって。この人は蒼葉さんの友達だ」 『――!!』 受話器の向こうかでもはっきり分かった。ハルヒの奴、驚嘆に絶句しやがったな。 「そう言えば、あの時はお互いによく顔は見えなかったっけ」 「うん。それに今日は髪の色も違ってたから本当に分からなかったんです」 アクリルさんの涼やかな笑顔の感想にハルヒがはしゃぐ笑顔で相槌をうっている。 場所はいつもの喫茶店、ではなく、駅前にあるカラオケボックスの一室。 なぜこんな場所に居るかと言うと、ハルヒが異世界人とじっくり話をしたい、と言うのが一番の理由だからだ。宇宙人、未来人、超能力者に関して言えば、んなもん、部室でできるし、部室にはよほどのことがない限り、俺たち以外はいない訳だから他人の目を気にする必要はどこにもない。 しかし、異世界人であるアクリルさんはそうはいかないんだ。学校に行く、という手もないこともないがそれではここから到着までの時間が馬鹿にならん。 となれば少しでも早くハルヒの望みを叶えてやろうと思えば、周囲に気遣いのいらない俺たち以外は誰も来ない防音設備の整った場所が必要となる。 それがこのカラオケボックスってことさ。 「あと蒼葉さんとはゆっくり話す機会はありませんでしたし、今回のチャンスは逃すわけにはいきません」 ううむ。ハルヒの丁寧語というものはなんとも新鮮でかつ、どことなく違和感が溢れまくっている。 まあ仕方ないよな。普段のこいつは遠慮という言葉からは一番遠いところに居る奴だ。生徒会長は勿論、軽音楽部の諸先輩方々にさえ無遠慮な言葉遣いなんだからな。 だいたい、先輩の朝比奈さんに対して『みくるちゃん』なんて言ってる時点で常識に照らし合わせて論外としか言いようがない。 「ん~~~別にそんな大したことでもないと思うんだけど……」 「そんなことないです! だって異世界ですよ異世界! あたしたちはどうやったって今現在は異世界に行く手段がないし、来てもらわない限り会えないんですから! それに今回はさくらさんは時間制限がありそうなトラブルでこっちに来たわけじゃないんでしょ? だったら、ゆっくり話したいんです!」 ふむ。異世界に行く手段がない、という常識をわきまえていることはどこかホッとするぞ。 「分かったわ。別に時間制限がないわけでもないけど慌てるほどでもないし。で、あたしに異世界……というか、あたしが住んでる世界の何を聞きたいの?」 アクリルさんが降参を表現した笑みを浮かべてハルヒの提案を受けて入れている。 「ありがとうございます! それじゃ――」 300W増しの輝く笑顔でハルヒは取材を始めた。 涼宮ハルヒの遡及Ⅲ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/21.html
ハルヒ「週末にスキヤキパーティーするわよ」 古泉「いいですね、僕は鍋を用意しますよ」 みくる「私はお野菜もってきますね」 キョン「野菜は多いですからね俺と分担しましょう、朝比奈さん」 長門「…肉、もって来る」 ハルヒ「じゃあ、私はたま…」 古泉「卵も僕が持ってきましょう」 ハルヒ「えっと、マロ…」 みくる「マロニーと蒟蒻は私が用意しますね」 ハルヒ「やっぱり白…」 長門「米…持ってくる」 キョン「やっぱ友達同士で持ち寄るってのはいいな」 一同「ハハハ」 ハルヒ「……」 ハルヒ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キョン「…………」 ハルヒ「キョン!あんた人の話聞いてるの!?もういいわ、古泉君よろしく」 古泉「マッガーレ」 ハルヒ「…………有希、頼める?」 長門「だまれ」 ハルヒ「うっ…み、みくるちゃん頼める?」 みくる「なんであなたのいうことを聞かなくちゃいけないんですかー?」 ハルヒ「わかったわよ。私が行くわよ…ぐすっ」 バタン 古泉「マッガーレ」 ハルヒ 「ねえキョン、昨日私が言ったテレビの心霊特集見た? ほんと子ども騙しにも程があるわ! あんなの誰が見たって……」 キョン 「え、あ……いや、悪いな……見ようと思ったんだけど、妹怖がるから見れなかったんだ」 ハルヒ 「え……あ、ああ……そう……仕方ないわよね……」 キョン 「悪いな」 ハルヒ 「ん……別に」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………………………………それでね」 キョン「あれ……? 古泉まだか……?」 ハルヒ「古泉君、なんか急にバイト入ったからこれないらしいわよ」 キョン「そうか、じゃあ暇だな…………そうだ、たまにはオセロしないか? お前とはやったことないよな?」 ハルヒ「……仕方ないわね、やってあげるわ、じゃあ負けたほうは罰ゲームね」 キョン「……キツイのは無しだぞ、いいな?」 ハルヒ「あら、キョンは負けるの怖いの? そりゃそうよね、キョンの頭で私に勝つなんて……」 キョン「フンッ、俺の秘技【四方返し】を見てもそんなこといってられるか? ……ちょっと待ってろ、用意するから……」 ハルヒ「ふーん、なかなか楽しませてくれそうね……!」 キョン「楽しむなんて生易しいもんじゃ……アレ……? ……あっ、オセロ昨日持って帰ったんだった」 ハルヒ「へ……?」 キョン「悪い、オセロねえや」 ハルヒ「…………」 キョン「……暇だな~」 ハルヒ「…………(ワナワナ)」 ハルヒ「あ~も~暇ね~……」 キョン「珍しく賛成だ」 ハルヒ「ん~……そうだ、キョン何か面白い話してよ」 キョン「……急に言われてもなあ……」 ハルヒ「別にいきなり面白いのじゃなくてもいいわよ、ちゃんと笑ってあげるから」 キョン「……」 キョン「……昔さ、俺んちの隣のおじいちゃんが死んじゃって……」 ハルヒ「アハハハッ!! それサイコー!!」 キョン「…………」 ハルヒ「アハ…………ハ」 キョン「…………」 ハルヒ「…………」 キョン「……ダメだ……」 ハルヒ「うっ……ひっく……ごめんなさい……ぐすっ……」 ハ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キ「ああ…分かった」 ハ(珍しく素直ね…) キ「長門、行くぞ」 ハ「!?」 長「………(無言で頷く」 出て行く二人 ハ「………」 ハ「キョン、ガスコンロのガス切れちゃったから買ってきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) ハ「キョン、スレ落ちそうだから保守してきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) 長「……チッ」 ハ(こっちも!?) ハルヒ「ねえキョン、スキヤキしたあとご飯いれる派?」 キョン「ああ、うちは餅とかうどんも入れるな」 ハルヒ「あ! お餅入れるとおいしいわよね! 分かる分かる!!」 キョン「ああ、そうだな」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「…………………………………………………それでね」 キョン「ん……でも、やっぱりハルヒって料理うまいな」 ハルヒ「えっ……! あ……と、当然よ、当然! 私はキョンと違って万能型だからなんでもできて当たり前なのよ!」 キョン「………そういうトゲのある言い方やめろよ、せっかく人が誉めてんのにさ……あ~あ……誉めて損した」 ハルヒ「え……? あ……あ、その……」 キョン「………じゃあそろそろ帰るわ、長門、手伝ったほうがいいか?」 長門「大丈夫」 キョン「そっか、悪いな、じゃあな」 ――パタン ハルヒ「あ……」 長門「……もっと素直になったほうがいい……」 ハルヒ「…………そう……よね……ハァ……」 ハルヒ「ねえキョン、なんでみんな部室に来ないのかしら?」 キョン「・・・・・IEの履歴は消しといたほうがいいぞ」 「それじゃあな、ショタコン」 ハルヒ「ねぇキョン!卵の黄身と白身どっちが好き?」 キョン「何だいきなり」 ハルヒ「いいから答えなさいよ!」 キョン「・・・キミが好きだ」 ハルヒ「ごめん聞こえなかったわ、もう一回言ってくれる?」 キョン「キミが好きだ」 ハルヒ「私も好きよ!キョン!」 キョン「そうか、あの口の中の水分を根こそぎハンティングする感が大好きなんだよ」 ハルヒ「いや・・・そうじゃなくて・・・」 キョン「ん?じゃあなんなんだよ。お、長門~今帰るのか~?丁度良い、茶でも奢るからちょっと付き合えよ」 長門「コクリ」 ハルヒ「・・・・・・・」 長門「・・・・私は白m」 ハルヒ「聞いて無いわよ!」 キョン「俺はSOS団を辞めるぞーハルヒー!!」 ハルヒ「そんな!?あんたのいないSOS団なんて意味ないわ思い直してキョン!」 キョン「じゃあ、お前も止めろよ。そうすれば一緒だろ」 ハルヒ「それもそうね。あんた頭いいわね。 それじゃあ、早速生徒会に知らせてくるわ」 キョン「やったな!これでこの部室は文芸部のものだ。 あの訳の分からない同好会以下の部ともおさらばだぜ!」 長門「…ブイ」 古泉「まったくあなたも人が悪いですね」 みくる「古泉君も止めなかったじゃないですか」 古泉「それもそうですね」 キョン・長門・古泉・みくる「アハハハハハハハハッ」 ハルヒ「待ってててね。キョン今帰るからね!」 鶴屋「今日は私のおごりさ、がっつり食べてくれにゃ」 ハルヒ「ほら、キョンこれ焼けてるわよ!はやく食べなさい!」 キョン「かってに俺のさらに乗せるな、汚らわしい」 「あ、朝比奈さん、それハルヒがひっくり返したやつです、食べない方がいいですよ」 「おい古泉、それは俺が愛情こめて焼いてるやつだ、勝手に食うな」 古泉「だから食べるんじゃないですか、ああ長門さん、それ、涼宮さんが触ったやつですよ」 長門「・・・ありがとう」 ハルヒ「らんららんららーん♪キョン食べてくれるかしら、私のおにぎり」 ハルヒ「あっれー?おかしいな?にけやの袋しかないや、ま、いっか」 学校で ハルヒ「キョン、おにぎり作ってきたから一緒に食べなさい!」 キョン「どうしたんだめずらし・・・・おちょくってんのかお前」 ハルヒ「え、な、なに?」 キョン「脇で握られたちぢれ毛入りおにぎりなんて食えねーだろ」 ハルヒ「え、いや、脇でなんて、それに、いま冬だしえ、いや」 ハルヒ「さあ、出来たわよキョン。たらふく食べなさい」 キョン「…何だこれは」 ハルヒ「何って見て分からないの?蕎麦よ、そ・ば。 今日は暑いからざる蕎麦よ。あまりの美味さに昇天するわよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 ハルヒ「??」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知って蕎麦を用意したのか。 昇天か、あやうく殺されるとこだったぜ」 ハルヒ「え、ちが」 キョン「黙れ殺人鬼!もう金輪際俺にちかづくんじゃねえ!あばよ!!」 ハルヒ「あっ、キョン待って!」 ズルズルズル 長門「刻み海苔がない。わさびの風味も足りないこれは蕎麦じゃない」 古泉「さあ、出来ましたよキョンタン。たらふく食べてください」 キョン「…何だこれは」 古泉「何って、見て分からないんですか?蕎麦です。 今日は暑いからざる蕎麦です。あまりの美味さに昇天しますよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 古泉「・・・」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知ってそばを用意したのか。」 古泉「はい。知ってます。」 キョン「?」 古泉「キョンタンが蕎麦アレルギーということで、そば粉を使わずに蕎麦を作りました。 苦労したんですよ。」 キョン「古泉・・・・・・俺の為に・・・・・・」 古泉「さぁ、たらふく食べてください!」 キョン「うう・・・・・・ありがとう古泉・・・・・・」 ズルズルズル 長門「白くて蕎麦にしては太い。むしろうどん」 ハルヒ 「もぅ!男同士でこすったり、さわったりして!!何が楽しいの!!ニンテンドーDSいっしょにやろうよ!」 キョン 「それ以上大声で叫ぶな。お前がいう言葉はすべて卑猥に聞こえる」 古泉 「それに、われわれはニンテンドーDSなんかしてませんよ。キョンたんをこすったりさわったりして遊んでいるんですよ」 ハルヒ「!! ちょっと・・・私の机とイスがないじゃない!」 ハルヒ「ねぇ朝倉さん、私の机がないんだけどどうにかしてよ。」 朝倉「うん、それ無理。」 ハルヒ「無理って・・・、あんた学級委員長でしょ!」 朝倉「死になさい。」 ハルヒ「・・・・・・」 ハルヒ「シャミセン~~~、ほれほれ~」 シャミセン「にゃ~」 ハルヒ「こっちこっち~~」 シャミセン「にゃーにゃー」 ハルヒ「やっはりあげなーいっ!」 キョン「おい、あんまいじめんなよ」 シャミセン「シャー!!」 ハルヒ「キャー!」 キョン「おい、ぱ、パンツ見えてるぞ…///」 一応いじめもののつもりだ ハルヒ「みんな!今度の日曜日に探索に向かうわよ! もしかしたら宇宙人とか何か出るかもしれないわ!」 みくる「こいつはくせぇッー!電波のにおいがプンプンするぜッーー! こんな電波には出会ったことがねえほどなァーーーッ 七夕で電波になっただと?ちがうねッ!!こいつは産まれてついての電波だッ! キョンくん 早えとこ病院に渡しちまいな!」 ハルヒ「な、そこまでいう必要ないじゃない!有希ちゃんは来るでしょ」 長門「これは試練だ 電波に打ち勝てという試練を受け取った」 ハルヒ「ひ、酷い みんなして酷いこと言わなくてもいいじゃない」 キョン「おい!これじゃあまりにもハルヒが可哀想だろう! 確かにハルヒは電波だがここまでいう必要がないじゃないか!」 ハルヒ「キョン…、それじゃ来てく【キョン】「だが断る」 部室から出て行く部員達、残されたハルヒ ハルヒ「私が何をしたっていうのよ・・・」 古泉「なんていうか……その… 下品なんですが…フフ…… 勃起………しちゃいましてね…………」 みくる「おめーなにキョン君たぶらかしてんだよーああ?!」 ハルヒ「すいません、私は恋しちゃだめってことですか?・・・・」 みくる「恋するなとは言ってないだろうが!!だったらキョン君以外でしろ!!わかったな!!」 ハルヒ「・・・・・・・はい」 みくる「明日も虐めてこいよ!!か弱い女の子に男は弱いんだからな!!」バタバタバタ ハルヒ「はい・・・・」 ハルヒ「キョン・・・・・・・・」 ハルヒ「やめて!電源コードを鼻にささないで!!」 みくる「ふふふ、いくわよ?スイッチ…」 ハルヒ「やめてえええぇぇぇ」 みくる「オン!!」 かちっ みくる「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」 ハルヒ「ひ、ひゃあぁぁあああ」 キョン「ハルヒ・・・お前に言っておくことがある」 ハルヒ「なによ」 キョン「オレは阪中さんのことが好きだ」 ハルヒ「!?と、ととと突然なに言い出すのよ!」 キョン「オレは本気だ。2番目は朝倉だ。それはどうでもいいんだが、 どうしたら彼女と付き合えると思う?」 ハルヒ「あ、あんたなんかがあの子と釣り合うワケないでしょ! なんたって相手はお嬢様よお嬢様!顔だってかなりかわいいし!」 キョン「わかった。お前はアテにならなさそうだ。他をあたってみる」 ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン!どこ行くのよ!」 キョン「ちなみにハルヒ、お前は12番目に好きだ」 ハルヒ「・・・・・・・・」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見た!?」 キョン「黙れよ切れ痔女( ´,_ゝ`)」 ハルヒ「き、ききききき切れ痔じゃないわよ!キョンのバカあぁぁぁぁっ!」 ハルヒ「うわあぁぁ~ん!」 キョン「じゃあ俺が痔を治してやるよ」 ハルヒ「へっ?何を言って…きゃあ!ちょ…やめ…」 キョン「へへへ…なかなか綺麗なケツしてるな」 ハルヒ「アナルだけは!アナルだけは!」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見たでしょ!? …見たんでしょ? 白状しろ~~~」 キョン「……いや…(お前に)興味無いし…帰るわ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記み、見た!?」 キョン「えぇ、机に置いてあるあれ朝比奈さんの日記じゃなかったのか!?」 ハルヒ「やっぱ見たのね。この覗き魔」 キョン「プッ、お前の日記だったのあれクククッ…アハハ」 ハルヒ「何よ?笑われる内容は書いてないわよ、団長日誌なんだから」 キョン「ハハハ、だって乙女チックな文字にクマやウサギの手書きイラストだぜ」 ハルヒ「なっ、何よっ!!私だって女の子なんだからねっ、バカキョン!!」 長門「…かかと落とし!」 みくる「ふみゅ~~、ぃたいです~~」 古泉「ははは、空中モトヤチョープ!」 ハルヒ「ちょっ、ちょっと何すんのよ!!!」 ………… キョン「ハルヒ、空気読めよ…って言うだけ無駄か」 みんな「あはははははははは!!」 ハルヒ「うぇ~ん、腫れてるよ…」 ハルヒ「キョン、私の気持ちに気付いてくれるかな?」 長門「…それはない」 みくる「何ねぼけたこと言ってるんですかぁ?」 古泉「今日は差し入れを持ってきました。フンモッフベーカリーのカレーパンですよ。」 みくる「わぁ、知ってます。あそこのカレーパンって並ばないと買えないほど人気なんですよね。」 古泉「あそこのパン屋の主人とは古い付き合いでしてね、特別にとっておいてもらったんですよ。 さぁキョン君、どうぞ。」 キョン「あぁ、悪いな。」 古泉「朝比奈さんもどうぞ。」 みくる「はい、ありがとうございます。」 ハルヒ「気が利くじゃない古泉君!」 古泉「長門さんも。」 長門「・・・・・・」コクッ キョン「あれ?古泉、お前の分は?」 古泉「ちゃんと人数分買ってきたんですけどね・・・あ、気にしないでください。」 キョン「たぶんこの中にあつかましい奴が一人いるんだろうな。」 みくる「・・・・・・チラ」 長門「・・・・・・チラ」 ハルヒ「・・・・・・・あの、古泉君、私お腹いっぱいだから・・・・。」 ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。 このなかに宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら あたしのところに来なさい。以上。 あ、あと水虫です。」 一同「触んなや。」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6556.html
Ⅱ 「最近、涼宮さんとはどうなんですか?」 「どうって、何がどうなんだ」 「とぼけないでくださいよ、仲がよろしいそうじゃないですか。僕としても、とても助かります」 別段、仲良くしてるつもりはない。ハルヒはいつも通りだし、俺もいつも通りだ。しかし古泉曰く、最近は閉鎖空間もほとんど発生しなくなったし、発生したとしても小規模なもので、神人もそんなに強くないという。これは涼宮ハルヒの精神がとても穏やかなことを意味してるんだそうだ。 「特に良かったのは、涼宮さんが悪夢を見なくなったことです。おかげでこちらの睡眠が妨げられるなんてこと、もう無いですよ。全くね」 ハルヒの開催した読書大会週間終了まで今日含めてあと1日。つまり今日終わるわけだが、俺は部室でパソコンをいじりながら昼飯を食っていた。インターネットから哲学書を読んで、どう思ったかを載せている人から、そういった感想文を参考にしようと思ったからだ。 「それは参考ではなく、丸写しです」 黙れ古泉。こちとら切羽詰まってるんだよ。 「というより、なんでお前までここにいるんだ」 「ふふ、一応貴方に近況報告をしておこうと思いましてね。多分感想文を1枚も書いていないでしょうから、きっとここに来るだろうと」 やっぱりお前は嫌な奴だ。そんなんだから俺の中でのお前の株がどんどん下落していくんだよ。どこかの航空会社のようにな。 俺と古泉が話している最中、長門は部室で科学の本を読んでいた。長門はもう昼食が済んだのか、あるいは宇宙人は昼食べなくても平気なのか。でもこんな細い体をしながら、案外大盛りカレーを3人前くらいペロリと食べてしまうかもしれない。まあ、さすがにそれはないか。 「長門、今何冊目だ?」 「72冊目」 なんかもう長門だけ別の大会開いてないかこれ。1日10冊読んでも達しないぞ。 「長門も本を読みすぎて、ハルヒみたいにならないようにな」 「‥‥‥‥」 ハルヒは本の読みすぎで、睡眠不足まで陥った。でもあの部室での快眠以来、家でもちゃんと寝てるようだ。目のクマはもうないし、元気だってバリバリだ。いつも通りのハルヒに戻ったというわけだ。塩をかけられて干からびそうなナメクジのようなハルヒもそう見られるようなものじゃないが、やはりこちらの方がハルヒらしい。 「いつも通りのハルヒ‥‥か」 「ん? どうかなさいましたか?」 「いんや。お前は大人しく弁当を食ってろ」 フフ、とにこやかに弁当を食べている古泉にも、3度の飯より本、といった長門にもまだ言ってないが、ハルヒは少しだけ何か変わった気がする。具体的に何、とは言えないし、その変化も顕微鏡で覗いても分かるか分からないかの微々たる物なんだが、何故だかハルヒは何かが変わったと確信を俺は持っていた。 性格、ではない。ハルヒとのやり取り、でもない。いつも通りのハルヒなんだが、何かが違う。 その答えは結局、有難い哲学の本を読んだ感想文を写している間にも出なかった。ハルヒがあの日素直に感謝を述べたというのがどうもむずかゆいのだ。何故だ。 「コイですかね」 「なんだって?」 「いえ、この魚はコイかな‥‥って」 紛らわしいことを言う奴だ。だからお前はいつまでたっても平均株価30円なんだよ。 パタンと長門が本を閉じ、もうそろそろ昼休み終了の合図5分前だ。書けた感想文は2枚。これはもう駄目かもしれんね。 「ではまた後で」 「‥‥‥‥」 長門も古泉も自分のクラスへと向かい、俺もクラスへと戻ることにした。さてさて読書感想文どうするかな。国木田とかそういう本を読んだ経験とかないだろうか‥‥‥。 健全たる高校生が悟りの境地に入り、ましてや俺の友人の中にそのような人物が紛れこんでいるなんてことはなく、俺は授業中の時間を削って読んでもいない哲学書の感想文を書こうとしたがやはりペンは進まず、あれから全然進んでいない形でハルヒに提出することになった。 「補習よ!!」 団長がいつの間にか図書管理職に変わっており、管理職様は俺にそう言い渡した。ハルヒ、俺が言うのもなんだが、10冊しか読んでいないお前は、あれからさらに1冊読み計73冊を読破した長門に図書管理職の座を引き渡すべきじゃないか? 「みくるちゃん12冊! 古泉君10冊! 有希は73冊! で、あたしが10冊!!分かる、キョン? 皆ノルマの2倍は読んでるのにあんただけ0冊よ!」 ちょっと待て。よく見ろハルヒ。感想文は2枚出してるじゃないか。俺としては上出来な方だぞ。 しかしハルヒは俺の感想文をまじまじと見つめ、 「キョンがこんな知的溢れる文章を書けるわけないでしょ」 と、一言。至極ごもっともだが、それを他人に言われると腹立つのは何故だ。ホワイ? 「大体な、俺に哲学なんてはなから無理なんだよ。せめて物語とかにしてくれ」 小説だって無理だろうが、一応の抗議だ。まあ哲学書よりはページは進むだろう。 「クジ引きで決めたことなんだから、それに従いなさい! キョンは放課後、必ず哲学書を毎日ここで読んでいくこと! 10冊!!」 「10冊!?」 俺の記憶が宇宙人に改造されてなければ、ノルマは5冊のはずだが。 「当然でしょ。皆2桁読んでるんだから。有希なんて、あと3日あれば100冊なんてあっというまよ。だからあんたは10冊読みなさい! 延滞料よ!」 延滞料ってなんの延滞料だ。1週間で5冊読まないと10冊に増える延滞料なんて初耳だ。延滞量の間違いだろ。 しかし抗議したところで、もはや最後の審判を下し終わったかのようなハルヒの耳には届かず、俺は古泉とボードゲームをする時間を毎日削って本を読む羽目となった。 「相手がいないと寂しいものですね」 こんなことを言い、俺が死ぬような思いで哲学書を読んでいる隣で朝比奈さんとオセロをやってる奴の平均株価は、30円から0へと下落していった。 喜べ。もう何倍しても0だぞ。 長門が本を閉じても、補習は終わることはなかった。長門、いつもなら下校時刻30分前に本を閉じるのに、最近はやたら閉じるのが早くなったな。頼むからチャイムが鳴るギリギリまで読んでくれよ。でないと‥‥‥ 「お先に失礼します」 「頑張ってね、キョン君」 「‥‥‥‥」 「ほら、キョン! まだ半分以上あるわよ!」 ハルヒと2人きりになってしまうだろうが‥‥‥。 「なあ、ハルヒ。俺が苦しんで本を読む様はそんなに面白いか?」 「頭良くなるには苦痛が必要なのよ。アホになりたいなら楽すればいいわ。一瞬でそうなるから」 俺はこの時ほど一生アホのままでもいいと思った瞬間はない。 しかしハルヒも暇な奴だ。長門達が帰り、秋だからか日が落ちるのが早くなってきたこの時間帯に、わざわざ電気つけて俺の隣で一緒に本を読んでやがる。団長席はあっちだぞ、ハルヒ。 「うるさいわね。席なんてどこでもいいじゃないの」 そう言って、でも一応か席を立ち、団長と書かれている三角錘を持ってきて、机の上にバンと大きな音を立てて置いた。 「あたしがルールよ」 なんとまあ利己主義なルールだ。よく地球はまともに回転してるな。 「ハルヒ」 「何よ。本読みなさい」 「悩みは解消したか?」 「悩み?」 「ほら、いつだか言ってたろ。1週間前だったか、それぐらいの時に。人の中の人が表にどうやらこうやらってやつだ」 「‥‥‥‥」 ハルヒは考えるように、手で顎をなぞり、うーんと唸った。まあ無理もないか。あの時ハルヒは睡眠不足で頭が働いていなかったようだし、多分自分でも何を言ってるのか分からなかったんだろう。 「‥‥‥あー、あれ。解決したわよ」 「そうかい。そりゃ良かった」 「ねえ、キョン」 「ん?」 「その時、あたし他に何か言ってた?」 「いや。他には特に何も言ってなかったと思うが」 「そう」 もうそろそろチャイムが鳴るかと思って時計を見ると、まだ下校時刻まで40分以上あった。全然時間経ってないじゃないか‥‥‥。 「こら、キョン! よそ見してる暇はないわよ! 」 俺は情けないが、まだ1冊も読破していない。読んだ振りをして済めばいいが、感想文を書かなきゃならん。でたらめを書こうにも、どういうわけだが先にハルヒがこの本を読んでしまっているから、的はずれな内容は書けないのだ。 「あと35分よ! 今日こそ1冊読破だからね」 ハルヒが毎回そう意気込むが、結局今回も読破出来なかったのは言うまでもない。 「しかし、キョン。お前もよくやるなー」 「なんのことだ?」 「何って、最近あの涼宮とラブラブらしいじゃねーか。一体どんな手を使ったんだ?」 「へえ、キョン凄いなあ。たったの半年ちょいで、そこまで関係を進めていたなんて」 そう話をする相手は谷口と国木田だ。3人で机を囲み、弁当を食いあっている時の話題で必ずこういった話が出てくるものだが、まさか俺の番がくるとはな。谷口、一体誰がそんなことを言ってるんだ? 「オレも人づてに聞いただけだから曖昧なとこもあるけどよー、なんでも、涼宮のあの変な部活をやっている最中にキョンと涼宮以外の奴が途中で帰っちまうだとかなんとか。他にも、ここ最近ほぼ毎日一緒に帰ってるんだろ? 2人で。そういうの見てるのって結構多いんだぜ」 しかしあの涼宮とキョンが、プススと気色悪い笑い声を出しながらニヤニヤしてる谷口もあれだが、健全な顔をしながらも興味がかなりありそうな国木田が 「もう付き合ってるの?」 と聞いてくるのも頂けない。でもここ最近2人で帰っていたのは事実だ。だからそんな噂が立つのも無理ないかもしれん。 「なあなあ、どこまでいったんだ? Aか? Bか?お前まさか、スィー‥‥」 「いっとくがな、谷口と国木田。俺はあそこで本を読んでるだけだぞ。しかも哲学書だ。おかけでもう5冊目に突入している」 哲学書と聞いて谷口はさらに笑い出し、どんなシチュエーションだよ、さすが2人とも変わってるだけのことはある、と妙に声を張り上げて周りのクラスメイトから不審者を見るような目付きで谷口が見られていたことは、俺の心の中の1つのストレス解消となっていた。 しかし、そうか。噂になってるとはな。涼宮の変人ぶりは入学1ヶ月でかなり広まり、校長の名前を知らなくても涼宮ハルヒの名を知らぬ者はいないとされるほどだ。そんなハルヒと、訳の分からん部活を行なっている部室内で2人きりでここ最近ずっと居て、挙句の果てに一緒に帰っているのだ。手こそ繋いでないものの、それを目撃した人や聞いた者は 「ああ、なるほど」 と、自分勝手に解釈し、妄想を広げているかもしれない。谷口のように。 「というわけなんだが、誰が噂を広げたか分からないか?」 「不明」 だよな。大体、知った所でどうするわけでもない。 「貴方の思っている不明と私の言ってる不明には解釈に齟齬がある」 「‥‥どういうことだ?」 「噂を広げている人間を確認するのは容易。でも、今回の貴方と涼宮ハルヒの噂は、自然発生し各個人の視覚、聴覚を司る脳の部分にダイレクトに植え付けられたもの。誰かが噂話を流し、全員が信じたわけではない」 「‥‥‥えーと、それは長門。どういうことだ?」 「全員が貴方と涼宮ハルヒが相互良関係に務めていると勝手に解釈をした。直接見たわけでも、聞いたわけでもない」 つまりだ。 普通噂は、誰かが目撃したものを知人、あるいは先輩後輩に話したりするわけだ。その聞いたものがまた同じことを別の人間に繰り返し、その情報が広がっていくというのが本来の在り方だ。しかし長門が言うのを聞いてると、誰も俺とハルヒが一緒に部活をしてたり、下校してたりするのを見ていないのにも関わらず噂が広まったということになる。まるでその噂を最初から知っていたみたいに。 「誰も見てない、言ってないのに噂を皆が知ってるなんてあり得ないじゃないか」 「そう。起こりえない状況。」 「じゃあ‥‥なんでそんなことが‥‥」 俺が長門にそう聞くと、ようやく長門は俺を見上げるような形で視線を向けた。 「最も高い可能性として‥‥」 そう前置きを置いた。そして無機質な瞳とは裏腹に、出てきた言葉は俺を驚愕させるものだった。 「‥‥涼宮ハルヒがそう望んだから」 「さあ、今日もSOS団活動するわよ!キョン、あんたは読書だからね!!」 ハルヒの何かが違う、と強く思っていたが、ここ最近それは気のせいだろうと思ってた。 だが今再び俺はひどくそう痛感している。 「なあ、ハルヒ」 「何よ」 「これでもう5冊目だな」 「そうね」 「もう大健闘したんだ。これ読んだらもう勘弁してくれ」 「却下よ」 ですよねー。 何故ハルヒは、そんな噂が広まることを望んだのだろう。まさかハルヒが俺に好意を抱いてるとは考えにくい。いや、しかし、じゃないと理由が‥‥ 「何1人で赤くなってるの。そんなにヤハウェが良かったの?」 「答えはきっと、イエスですよ涼宮さん」 「キリストだけにかっ! って上手いわね古泉君。さすが副団長だけのことはあるわ」 ハルヒと古泉がしょうもないギャグで笑い合い、朝比奈さんはちらちらとこちらを窺い、長門はおそらく200冊目くらいの本を読んでいると思われる中、俺は苦悩していた。あのハルヒが!あり得ないだろ! しかし実際噂は広まっている。ハルヒが来る前、部室に来て朝比奈さんに会ったら 「あ‥‥良かったですね」 と言われてしまった。朝比奈さん、貴方はここでの事情を知っているじゃないですか。なのに何故そんな言葉を‥‥。 「さあキョン! あと少しで完結ね。そしたらようやく半分か。まだまだ道は長いわね」 なあ、頼むからそう嬉しそうに言わないでくれ。どう反応していいか分からんくなるだろうが。 いや、変に意識してるのは俺の方じゃないか。見ろ、あのハルヒを。いつも通り豪快に、身勝手な行動をしているじゃないか。それにさっきの言い方だって思い出してみろ。別に嬉しそうじゃなかったろ。いつも通り、いつも通りだ。あれがハルヒボイス。モチベーションを一切崩さない団長様の声は、常にあんな感じだっただろ?そうだろ俺? 本は全然進んでないのに、長門がパタンと本を閉じる時間はもうやってきた。今日の長門は遅い方だ。何故なら下校時刻まであと1時間だからな。そう‥‥あと1時間も‥‥。 「では、お先に失礼しま‥‥」 「古泉、3回‥‥いや、1回でいい。久しぶりに五目並べしないか」 「キョン! 何言ってるのよ。まだ本は残ってるの。そういうのは、読み終えてからやりなさい!」 お前はどっかの母ちゃんか。 「貴方から誘いを受けるなんて、珍しいこともあるもんです。ですが、僕は今日用事がありまして、またの機会ということでよろしいですか?」 お前、用事なんてないだろ。用事がある奴はな、用事なんて言わずに、その用事の具体名を言い出すもんなんだよ。パーティー行かなあかんねん、みたいなのをな。 「では失礼します」 「キョン君、涼宮さんと仲良くね?」 「‥‥‥‥」 バタン、と扉が閉まり。 「さあ、今日も気合い入れて読むわよ! いいわね!」 俺はいつもより読むスピードが愕然と落ちながら、愛の神とはなんぞやを本とチャイムがなるまで語りあっていった。 「頼む、長門! こんことを頼めるのはお前しかいない!!」 俺はハルヒと別れた後、長門の家に来ていた。噂話のこともあってか、最近のハルヒは以前と何かが違うということを、俺はプロレスラーが技をくらう時に信じられないくらいでかい声を出すくらいのオーバーさに捲し立てて説明した。その話を聞いていた長門も、俺にお茶を出しはしたものの、俺が話している間は何も反応はしてくれなかった。 話し終わった後、長門はこうポツリと言葉を漏らした。 「貴方は、涼宮ハルヒが貴方について何を考えているのかを知りたいということになる」 「‥‥‥そ、そうなる‥‥のか?」 「出来る」 「本当か長門!?」 「でもしない」 「‥‥ハルヒの精神を脅かしちまうからか?」 「それもある。でも私がそれをしないのは、もっと別にある」 「それは‥‥‥一体」 「私はしない。貴方のためにも、彼女のためにも」 そう最後に言った時の長門の目は、何故だか無機質色ではなかった。ほんの少し口調もちょっと強かったな。気のせいではない。 結局、俺は万能宇宙人の力を借りれぬまますごすごと帰路に立たなければならなかった。まあ、そりゃそうだろう。 家につき、 「キョン君おかえり~」 と言ってくる妹をよそに、俺は考えなければならなかった。いや、考えなければならない義務などない。しかしどうしたことか、俺に限ってそんなことはないだろうと思うのだが、そういった考えとは裏腹に勝手に考えてしまうのだ。いつも大して頭を使わないのに、どうしてこんな時ばかり活発に脳とやらは動くのか。俺はベッドに腰かけ、その後仰向けになる形で天井を見つめた。そして、ようやく、避けられないパターンの考えを考慮にいれなければならない羽目となった。長々と喋ってきたが、つまりだ、そのだな‥‥。 俺がハルヒに更なる好意を抱 「キョン君~、ご飯だよ~」 ……ナイスだ。ナイスだ妹よ。いつもくだらない用事でしか俺にちょっかいをかけないが、今回ばかりは最優秀妨害賞にノミネートするくらいの素晴らしいことをやってくれた。危なかった。俺はなんてことを考えていたんだ。危うく1人で悩み苦しみ、悶絶するところだった。そうだ、飯だ飯。俺にとって大事なことってなんだ? ハルヒのことについて考えることか?己が思考を深く追求することか? 違う。断じて違う。俺の最優先事項は飯を食うことだ。そう、そのために生まれてきた。多分、空腹だからさっきのような訳の分からない考えをしそうになったんだろう。危ない危ない。いや、というよりさっきの思考ってなんだ。別に特別なこと考えてないし。谷口の話す自分のモテ度や、他人の話す夢の話やペットの自慢と並んでどーでもいいことを考えていたんだ。そうだろ、俺?今はともかく飯だ。飯を食べよう。今日のご飯は何かな~っと。‥‥‥ 「‥‥どうしたんだ、キョン。なんか目の下にクマがついてるぜ?」 「いや、放っておいとくれ谷口。いやいやいや、やっぱり放っておくな谷口」 「何言ってるんだ、キョン。ボケたか?」 結局夕飯をたらふく胃にぶちこんでも、俺の脳は何かと働き続けていた。ベッドで寝たのは11時のはずだったが、おそらく実際に寝たのは3時間にも満たないんじゃないかと思うくらい、俺は思惑していた。 教室に着き、なるべくハルヒの方を見ないようにして席を着いたのにもかかわらず 「どうしたの、キョン? なんかクマがあるわよ」 と心配そうに声をかけてきた。心配そうに? ハルヒに限ってそれはない。いつも通りの音域でそう聞いてきた。 「まさか哲学書読んでた、なんて言わないでしょうね。あんただとしたら最高にアホ。アホよ。体壊したら、SOS団に参加出来ないじゃない!ま、無理にでも参加させるけど」 本を読みすぎて寝不足の体験をしたお前には言われたくないがな、ハルヒ。 しかし俺は心でそう突っ込んでおきながら、あることに気付いた。 今のこの俺の状況、前のハルヒの状況と似てないか? 実はハルヒの寝不足の原因も、本のせいじゃないのではなかろうか。確か長門が、ハルヒの睡眠不足の原因は‘人格と精神’の熟読と言っていたが、あれはあくまで推察だ。記憶を読もうとしても深くは読めないから、実際のところ本のことなんて関係ないかもしれない。今の俺だからこそ分かることがある。もしかしたらハルヒも何か考え事をしていたのかもしれない。何を?何をだハルヒ? 「多分、恋ですよ」 「なんだと!?」 「あ、いえ‥‥‥貴方の食べているお弁当のその魚、きっとコイですよっていう意味です」 谷口達と食べると、また噂話について聞かれるかと思い、ここでひっそり食べようかと思っていたら、先客が2名いた。1名は無論長門だ。もう1人はこいつだ。 にしても、そういう意味ですってなんだよ古泉。普通そんなこといちいち付け加えないぞ。 「と、言われましても‥‥そういう意味なんですから。貴方が誤解しないように、ね」 「誤解ってなんだ。まさかお前まで例の噂を信じてるわけじゃないだろうな」 フフと誤魔化し笑みを浮かべる古泉は、今回は弁当を持っていない。お前、今度は何しに来たんだ。 「今回は貴方が来るだろうと思ってここに来たわません。長門さんに話を聞いてもらいたかったのです」 「長門に?」 ええ、と頷く古泉に対し、長門はいつものように本を読んでいる。長門とは昨日の一件があってか、少し話しかけ辛いように俺は思えた。長門は無表情だから、そんな風に思ってるかどうかがさっぱり分からんのだが。 「最近、また閉鎖空間が発生していましたね」 「‥‥いつものことだろ」 「いえ、それが妙なんです」 古泉は俺と長門を交互に見てから、ハルヒの席を見た。そして目をしっかりと開き、いつもの微笑みを消してからこう続けた。 「閉鎖空間の規模が、どんどん大きくなってきてるんです」 それは、ハルヒがストレスをまた溜めているということか? 「ええ。でも、今まではこんなことありませんでした。閉鎖空間は涼宮さんの精神が不安定になると発生するものです。つまり、あの神人や空間は、涼宮さんのイライラそのものなんですよ。だとしたら、毎回僕達が必死で神人や空間を食い止め、倒し、元通りにしているのですから、閉鎖空間発生後はそうそうストレスが堪らないわけです。しかし‥‥」 古泉は俺の方をじっと見据えた後 「どういうわけだが、閉鎖空間の規模が回数を増す度に膨れ上がっていくのです」 「なんだ、その目は。まさか俺が原因か?」 待てよ古泉。俺はハルヒに嫌だ嫌だいいながらも、ちゃんとここまで付き合ってきたはずだ。読書の件のことだぞ。おかげでハルヒの機嫌も最近良いし、俺が原因となるようなことはしていない。 「おさらいしてみましょう」 古泉は微笑みを浮かべてから、そう口にした。 「涼宮さんは本が読みたかった」 そうだな。 「医学の本が読みたかった」 そうだな。 「そして読書大会なるものを開き、それを終え、今に至る」 まさしくそうだ。ハルヒが医学の本が読みたいがために、こんな読書キャンペーンまがいなのをする羽目になったんだろ。 「でもそれはおかしくないでしょうか?」 「何がだ」 「医学の本を読みたかったら、自分で勝手に読めばいいということですよ」 「独りで読むのが嫌だったんだろ。だからSOS団を巻き込んで、俺はこんな羽目に」 俺がそう言うと、古泉の俺の顔に人差し指を向けた。ズビシッ、と音が出るような勢いで。 「それですよ」 「何がだ」 「SOS団を巻き込んで、がポイントなんです」 古泉は推理小説で、読んでる最中に犯人が分かった読者のような顔をしていた。いつものうっとうしさが200%増しだぞ古泉。 「僕たち、どうやって本を選びましたか」 「クジだろ」 「涼宮さんは自分の神がかり的な能力に気づいていらっしゃいません。ここが大事なんです。涼宮さんが医学の本に当たる確率は5分の1。涼宮さん自身、人の精神なるものに興味を持ったのに、それが読みたくても読めない確率が8割なんです。いくら涼宮さんがSOS団を巻き込みたかったといっても、あまりに非効率すぎはしませんか?」 「確かにそうだが‥‥じゃあ、ハルヒはなんでこんなことを言い出したんだ?」 「真相が違ったんです」 真相なんて言葉、薬で小さくなった小学生探偵の番組以外で聞いたことないぞ。 「涼宮さんは人間の精神が学びたかったのではないんです。この読書大会は、貴方に本を読ませる環境を作り出すのが目的だったのです」 「なっ‥‥古泉。どういう意味だ」 「簡単ですよ」 長門も興味があるのか、活字から目を離して古泉を見つめている。 「涼宮さんはテレビで医学関係の番組をやっているのを見て、ふと思いついたのです。読書大会を開くことをね」 「関係ないだろ」 「大ありなんですよ。何故なら、その番組を見て、医学というのは何て難しいのだろうと涼宮さんは感じとった。そして、もしこれを本で貴方に読ませたらどうなるだろうと」 読めるわけないだろ、そんなもん。 「その通りです。あ、いえ、その通りというのは失礼でしたね。でも涼宮さんはそう思ったわけです。そして、ある作戦を思いついた」 「もったいぶらずに早く言え」 「了解しました」 「涼宮さんはSOS団を巻き込んだ読書大会を開きました。1週間に5冊という、2日に1冊読んでも間に合わない若干無理な条件でね。読む本は自由ではなく、選択式。医学、科学、哲学、エッセイ、小説。ちなみに聞きますが、貴方はこの中のどれだったら1週間で5冊いけそうです?」 「いや‥‥どれも無理だな」 「涼宮さんもそう目論んだ。そして涼宮さん内心、きっと貴方に哲学か医学か科学に当たることを願ったのです。そして願い通り、貴方は哲学に当たった」 ‥‥‥おい、まさか。 「当然貴方は読めるはずもなく、補習を言い渡されます。僕らが全員2桁以上読んでいるので、貴方も2桁読めと、最も納得いきそうな理由で、貴方は10冊読むことに決定した。仮に僕が5冊でも、貴方は10冊読むはめになっていたでしょう。延滞料で」 「じゃあ‥‥なんだ。それだとまるで、最初からハルヒは俺と2人きりになりたかったみたいじゃないか」 ニヤニヤと笑った古泉は 「その通りです」 と自信満々に言った。まさか‥‥そんなことはないだろ‥‥。 「長門さんが例えチャイムギリギリになって本を閉じることをしていても、貴方は残されていたでしょう。居残りで」 「な、なんでハルヒはそんなことをするんだ‥‥?」 我ながら情けない声色になっていたが、ハルヒがここにいないというのに、心臓は激しくビートを刻んでいた。静まれ、俺のビート! 「さあ‥‥何故でしょうね?」 古泉はトドメと言わんばかりにウインクを俺にした。止めろ、気持ち悪い。 「涼宮さんは貴方と2人きりになることを望んだ。証拠は貴方もご存知の通り、例の噂ですよ。涼宮さん自身が、そういった噂が広がればいいのにと望んだあの噂です」 俺はまだ弁当を半分しか食べていないのに、もう胃はギブを宣言していた。むしろ逆に、胃の中のものが外に出そうといわんばかりに俺は緊張していた。まさかハルヒが‥‥‥。 「待て待て。ハルヒが睡眠不足なのはなんでだ!?」 「それは、貴方に示しがつかないからでしょう。どんなに難しい医学の本でも、ノルマの倍はいっておいた方が、補習の際に説得力増しますし」 「確かあの時、閉鎖空間が発生してなかったな。あれはどうなんだっ!」 「閉鎖空間は精神の不安定からきます。だが、あの時の彼女は不安などなかった。確実に貴方なら読んでこないだろうという自信があったのですよ。眠いのも我慢したのも、全て自分で分かってのことです」 「じゃあ、じゃあだな‥‥‥」 そう口にして、何も出てこなかった俺はようやく痛感した。なんてことだ。まさか、古泉の推察に反論出来ない日が来ようとは。 「問題は、ここからなんですよ」 俺が独り悶絶していた矢先、古泉は声色を変えて長門を見据えた。顔からもいつの間にか、微笑みが消えていた。 「先ほども申しましたように、閉鎖空間はここ毎日発生しています。大きさを重ねてね。我々が四苦八苦して止めているのに、涼宮さんのイライラは増すばかり。今までの話を聞いて、長門さん、どう思いますか?」 「涼宮ハルヒは待っている。彼はそう言いたい」 長門、頼むから俺を見ながら言うのを止めてくれ。大体待つって、何をだ。ハルヒは何を待っているというんだ。 「決まってるじゃないですか」 古泉は真剣な表情を崩して、また笑みを浮かべながら 「告白を、です」 と言った。お前も表情をコロコロ変えて世話忙しい奴だな。 それにしても、長門。昨日はそう意味なのか。俺やハルヒのためにもって、そういう意味なのか? 「世界は、貴方が言うか言わないかにかかってます」 古泉がそう言った際、俺は何て口にすればいいか分からなかった。嫌だ? 分かった? 黙れ? 「嘘じゃありません。このままの規模でいったら、世界が飲み込まれるのもそう時間はありませんよ。あと‥‥そうですね、約1週間です」 ……読書の時もそうだったが、今度の1週間はもっと酷になりそうだ。 「でも、貴方は涼宮さんのことそんなに嫌いではないのでしょう? むしろ最近は、好」 「うるさい!!」 何を切れてんだ、俺。 あれから気まずい雰囲気となり、チャイムが鳴るまで俺は弁当箱を眺めていた。まだ中身はあるが、とても胃に入りそうにない。 ‥‥しかし、ハルヒもハルヒだ。何故こういう時ばかり状況だけを作って、あとは受け身モードなんだ。あの閉鎖空間での出来事もそう。キスの次は告白か。順序が逆で、笑えるぞ。 予鈴が鳴り、古泉達は部室から出て行ったが、俺は出て行かなかった。というより、足が動かない。 もし俺がハルヒに対して何の感情も抱いていなかったから、逆にあっさりと告白をしていたかもしれない。いや、でもやはり最終的にハルヒの心を傷つけるようなことをしたくはないから、古泉達になんとかしろと言っていただろう。 あの閉鎖空間の中での出来事は、ちょっとした強制でもあったのだ。世界が滅亡する瞬間に急に呼び出され、さあ早くしないと皆消えるぞという時だった。でも全く好きじゃなかったら、俺はしていただろうか?やっぱり答えはさっきと一緒で、きっとしていない。 「昔からキョンは変な女が好きだからねぇ」 いつだったかの国木田の言葉が思い出される。国木田、お前は佐々木のことを言っているのか? だとしたらハズレだ。やっぱり俺は、佐々木も好きかどうか分からなかったからな。 一緒に居て楽しい。 ハルヒも佐々木も、そういった部分で重なり合う。 「お待たせー!! 皆揃ってるわね。キョン、あんたなんで5時間目サボったのよ!」 「青春のサボタージュだ。多めに見てくれ」 「何よそれ。変なの。でもSOS団には来てるから、死刑じゃなくて罰金にしといてあげるわ! 今度の活動の時は、あんたが1番に来ても払うのよ。いいわね!」 このハルヒのどこがストレスが爆発しそうなんだ。どこからどう見たって健康良子だろうが。古泉の推理が外れてるという可能性は多いにあるぞ。 だが俺はそれを口に挟まず、黙って哲学書を読むことにした。今更になってだが、この本の言っていることが、それこそ遮光メガネを通して見た太陽のように明瞭に、頭に文字が入りこんでくる。この人達も考えて考えて考えて考えて、考えすぎてこうなったのだろう。今の俺とおんなじだな、預言者さんよ。 俺が食い入るように本を読んでいると、ふと誰かが横に立った気がした。目線を上げれば、そこにはメイド姿の朝比奈さんがいた。 「あ‥‥き、キョン君。お茶をどうぞ」 「すいません朝比奈さん‥‥って、ん?」 お茶の受け皿を見ると、何か紙が折り畳んである。ハルヒの方をそっと窺うと、今はパソコンに夢中らしい。朝比奈さんの様子から見ても、これは早く隠した方がよさそうだ。 「‥‥‥おいしいです。ありがとうございます」 「いえいえ」 お茶は本当に上手い。そして、この手紙をくれたことにはありがとうだ。俺は手紙をブレザーのポケットに閉まった。 紙には場所が指定されていた。俺はハルヒと踏切で別れた後、真っ先にその地へと向かった。夏に朝比奈さんの膝でぐっすりと眠ってたあのベンチだ。 「キョン君、良かった。思ったより早く来れたんですね」 その場所にはすでに未来人が待機していて、制服姿のまま俺を待っていてくれていた。長門の話を聞き、古泉の話を聞き‥‥。 朝比奈さんは、一体俺に何を伝えようとしているのだろうか。電灯の明かり以外何も照らすものがないその元へ、俺は駆け寄った。 →涼宮ハルヒの分身 Ⅲへ